特定技能外国人が退職したとき、受入れ企業(特定技能所属機関)は退職日から14日以内に出入国在留管理庁へ所定の届出を行う義務があります。日本人の退職と異なり、特定技能に固有の随時届出が複数あり、提出漏れは罰則や将来の受入れ停止につながる可能性があります。
また、退職者を出した後に転職者を新たに採用しようとする企業にとっては、面接前に確認すべき在留状況のポイントも別途あります。
この記事でわかること:
- 退職時に企業が提出すべき届出書類と期限
- 自己都合・会社都合で書類がどう変わるか
- 在留資格取消リスクと退職後に本人へ案内すべきこと
- 転職者を面接・採用するときの確認事項
執筆:株式会社kedomo(登録支援機関・外国人材紹介)
目次
1.特定技能外国人の退職は日本人と何が違うのか
日本人社員が退職する場合、企業が行う手続きは雇用保険の喪失届や社会保険の資格喪失手続きなど、労働・社会保険関係が中心です。
特定技能外国人の場合もこれらは共通して必要ですが、それに加えて入管法第19条の18に基づく随時届出を出入国在留管理庁へ提出する義務があります。この届出は登録支援機関に委託することができず、特定技能所属機関(受入れ企業)が自社の責任で提出しなければなりません(「特定技能所属機関・登録支援機関による届出」(出入国在留管理庁))。
届出の不履行や虚偽の届出は罰則の対象となるほか、引き続き特定技能外国人を受け入れることができなくなる場合があります。また、退職後に外国人本人が適切な行動を取らなければ在留資格が取り消されるリスクもあり、企業として適切な案内を行うことが求められます。
なお、2025年4月の制度改正で届出ルールが一部変わっています。自己都合退職時の「受入れ困難に係る届出」の要否など、変更点は2025年4月施行の制度変更まとめもあわせて確認してください。
2.退職時に企業が行う届出(14日以内)
退職が発生した場合、受入れ企業が行う届出は大きく「入管への届出」と「ハローワークへの届出」の2種類です。いずれも期限が短いため、退職の意思を確認した時点から準備を始めることを勧めます。
自己都合退職の場合
特定技能外国人が自らの意思で退職する場合(自己都合退職)、受入れ企業が入管へ提出する書類は以下の通りです(2025年4月以降の運用)。
提出書類(入管へ)
- 特定技能雇用契約の終了又は締結に係る届出書(参考様式第3-1-2号)
- 登録支援機関に全部委託していた場合:支援委託契約の終了又は締結に係る届出書(参考様式第3-3-2号)※退職者以外にも支援委託を継続している場合は不要
提出期限はいずれも雇用契約が終了した日(退職日)から14日以内です。
2025年4月の制度改正により、自己都合退職の場合は「受入れ困難に係る届出書」の提出が不要になりました。退職の申し出時点での届出も不要となり、実際に退職した後の雇用契約終了の届出のみで対応できます。
様式は「特定技能関係の申請・届出様式一覧」(出入国在留管理庁)からダウンロードできます。
会社都合退職の場合
経営悪化や事業縮小など、企業側の事情で雇用契約を継続できなくなった場合(会社都合退職)は、自己都合の場合より提出書類が増えます。
提出書類(入管へ)
- 受入れ困難に係る届出書(参考様式第3-4号)
- 受入れ困難となるに至った経緯に係る説明書
- 特定技能雇用契約の終了又は締結に係る届出書(参考様式第3-1-2号)
- 登録支援機関に全部委託していた場合:支援委託契約の終了又は締結に係る届出書(参考様式第3-3-2号)
提出期限について注意が必要なのは、「受入れ困難に係る届出書」は「受入れ困難の事由が発生したと判断した日」から14日以内であり、退職日ではない点です。実際に退職が決まる前の段階から期限が始まります。
また、会社都合で特定技能外国人を非自発的に退職させた場合、その後一定期間は新たな特定技能外国人の受入れができなくなる可能性があります。詳しくは「特定技能に関するQ&A」(出入国在留管理庁)を確認してください。
ハローワークへの届出
特定技能外国人が離職した場合、企業はハローワークへ「外国人雇用状況の届出(離職)」も行う必要があります。根拠は労働施策総合推進法第28条で、「外国人雇用状況の届出について」(厚生労働省)に義務として定められています。
提出期限は離職の翌日から起算して10日以内です。
雇用保険被保険者資格喪失届の提出にあわせて行うことができます。届出書の裏面に在留資格・在留期間・国籍など外国人固有の記載項目があるため、記入漏れのないよう注意してください。
3.退職した本人が行う届出と、企業が案内すること
本人が行う届出
退職した特定技能外国人本人も、退職日から14日以内に入管へ「所属機関に関する届出(参考様式1-4:契約の終了)」を提出する義務があります。根拠は入管法第19条の16です。
この届出を怠った場合、20万円以下の罰金の対象となるほか、その後の在留資格変更・更新申請で不利な扱いを受ける可能性があります。特に2026年以降、入管の審査で届出履歴の確認が厳格化される傾向があります。
企業としては退職時に本人へこの届出の必要性を伝え、提出方法(オンライン・郵送・窓口)を案内することが望ましいです。
3か月以上無職が続くと在留資格が取り消されるリスク
退職後、転職先が決まらないまま長期間が経過すると、在留資格が取り消されるリスクがあります。
「特定技能Q&A」(出入国在留管理庁)では、「正当な理由なく3か月以上特定技能に係る在留活動を行っていない場合は、在留資格が取り消されることがある」と明記しています。ただし、積極的に就職活動を行っていることが認められる場合は「正当な理由あり」として扱われる可能性があります。在留資格取消の判断は個別の事情を踏まえて行われるため、詳細は「在留資格の取消し(入管法第22条の4)」(出入国在留管理庁)を確認してください。
外国人本人にとっては、転職先が決まっていない状態で退職することで「在留期間が残っているのに帰国しなければならない」という事態になりえます。kedomoでは外国人の方に対して、転職先の見通しが立たないまま退職することのリスクをあらかじめ説明するようにしています。
登録支援機関として退職後に案内していること
kedomoが登録支援機関として支援している特定技能外国人が退職する際、企業側の届出サポートと並行して、本人への生活面の案内も行っています。日本人の退職と同様の手続きに加えて、特定技能外国人に特有の以下の事項について案内・確認しています。
- 銀行口座の扱い(転職先が決まるまでは閉鎖せず維持することを勧める)
- 転居がある場合の転居届(市区町村役場への届出)
- 国民健康保険への切り替えと保険料の支払い
- 国民年金への切り替えと納付(滞納は次のビザ更新に影響する)
- 失業給付の受給要件確認(雇用保険の加入期間が離職前2年間で12か月以上ある場合)
住民税・社会保険料・年金の未納・滞納は、在留資格の更新・変更申請において不利に働くことがあります。本人が把握できていない場合も多いため、企業・登録支援機関が退職時に一緒に確認することを勧めます。
4.転職者を面接・採用するときの確認事項
退職者が出た後、新たに転職者(他社から転職してきた特定技能外国人)を採用しようとする場合、通常の外国人採用とは異なる確認事項があります。
在留資格変更許可が下りるまで就労させられない
特定技能の在留資格は、パスポートに添付された「指定書」に記載された特定の企業でのみ就労が認められます。転職の場合も、新たな受入れ企業への在留資格変更許可申請が必要です。
「在留資格「特定技能」の変更許可申請」(出入国在留管理庁)によると、在留資格変更許可申請の標準処理期間は2週間から1か月程度とされていますが、実際には書類準備も含めて入社まで1〜2か月かかることが多いです。
この間、転職者は新しい企業で就労することができません。アルバイトも認められていないため、収入がない状態が続きます。採用を決めた後すぐに働いてもらおうとする企業が多いですが、在留資格変更許可が下りる前に就労させてしまうと不法就労助長罪に問われるリスクがあるため、注意が必要です。
届出が未提出の転職者は審査が不利になる可能性がある
前職を退職した際に本人が「所属機関に関する届出(契約の終了)」を提出していない場合、在留資格変更許可申請の審査において不利に扱われる可能性があります。
kedomoでは、転職者を受け入れる企業に対して「前職退職時の届出が適切に行われているか、面接の段階で確認することを勧める」と説明しています。届出が未提出の場合でも後から提出できますが、その事実が審査に影響する可能性を企業・本人が理解した上で手続きを進めることが重要です。
また、前職の受入れ企業が「特定技能雇用契約の終了に係る届出」を提出していない場合も、変更申請の審査に影響することがあります。特定技能の定期届出・随時届出の詳細も確認してください。
残存在留期間と通算在留期間を確認する
特定技能1号の通算在留期間は原則5年が上限です。転職者を採用する際は、以下の2点を在留カードと指定書で確認してください。
- 残存在留期間:現在の在留期間の満了日。在留資格変更許可申請は在留期間内に行う必要があります
- 通算在留期間:特定技能1号として日本に在留してきた合計期間。5年に近い場合、採用後すぐに在留期間の上限に達する可能性があります
同じ分野・業務区分への転職であれば技能試験の再受験は不要ですが、異なる分野への転職の場合は新たな技能試験への合格が必要です。採用面接の前に、本人の在留資格の分野と自社の受入れ分野が一致しているかを確認することが前提となります。
転職者受入れの詳細な手続きについては転職してきた外国人に必要な入管手続きもあわせてご確認ください。
5.まとめ|退職時・採用時のチェックリスト
自社の特定技能外国人が退職するとき(企業が行う手続き)
- 退職日から14日以内:特定技能雇用契約の終了に係る届出を入管へ提出
- 会社都合の場合:受入れ困難の事由が生じた日から14日以内に受入れ困難に係る届出も提出
- 登録支援機関に全部委託していた場合:支援委託契約の終了に係る届出も提出(他に委託継続中の者がいる場合は不要)
- 離職翌日から10日以内:ハローワークへ外国人雇用状況の届出(離職)を提出
- 退職時に本人へ案内:本人も14日以内に入管へ届出が必要であることを伝える
- 退職後の生活手続きを案内:国保・年金切り替え、転居届、銀行口座の扱いなど
転職者を採用するとき(企業が確認すべき事項)
- 前職退職時の届出(本人の「契約の終了」届)が提出されているか確認する
- 在留カードの在留期間満了日と通算在留期間を確認する
- 本人の特定技能の分野・業務区分が自社の受入れ分野と一致しているか確認する
- 在留資格変更許可申請が下りるまで就労させない(許可前の就労は不法就労)
- 申請から入社まで1〜2か月かかることを前提にスケジュールを組む
特定技能外国人の採用・退職・転職にかかる手続きについてお困りの場合は、登録支援機関であるkedomoまでご相談ください。特定技能の申請書類の詳細や登録支援機関なしで自社支援する場合の注意点、特定技能制度の概要もあわせてご覧ください。
6.よくある質問(Q&A)
Q1. 退職時に企業は何を提出すればいいですか?
退職日から14日以内に雇用契約終了の届出を入管へ提出します。会社都合の場合は受入れ困難の届出も追加で必要です。ハローワークへの離職届は10日以内です。
Q2. 届出を出さないとどうなりますか?
罰則の対象になります。今後特定技能外国人の受入れができなくなる可能性があります。本人も未提出の場合、在留資格の更新や変更で不利になる可能性があります。
Q3. 自己都合と会社都合で何が違いますか?
会社都合のみ追加書類が必要です。自己都合は雇用契約終了の届出だけですみます。
Q4. 退職後どれくらい働かないとリスクがありますか?
正当な理由なく3か月以上活動していない場合、在留資格取消の対象になります。就職活動をしていれば維持される可能性があります。
Q5. 転職予定者はすぐ働いてよいですか?
できません。在留資格変更の許可が出るまで就労は禁止になります。
Q6. 前職の届出は確認すべきですか?
必ず確認してください。未提出だと在留資格変更の審査に影響する可能性があります。



