特定技能外国人を雇用する企業には、外国人に対する支援が義務付けられています。この支援は登録支援機関に全部又は一部を委託することができますが、費用面で躊躇されている企業様も多いのではないでしょうか。この記事では、登録支援機関を利用せず、自社で特定技能採用をする方法について、わかりやすく解説します。
なお、このような記事を掲載していますが、kedomoも登録支援機関として特定技能人材と企業様の支援をしております。もし自社で難しいときは気軽にお声掛けください。
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目次
1.登録支援機関を利用しない場合に、クリアすべき2つの要件
登録支援機関を利用せず、自社で外国人に対する支援を行うためには、下記の2つの要件をクリアしなければなりません。双方の要件とも、在留資格の申請の際に審査されますが、説明文書を添付した方がよいケースもあります。はじめての場合は、人材紹介会社や行政書士などに相談した方が良いでしょう。
支援責任者、支援担当者を選任すること
出入国管理及び難民認定法第2条5項において「1号特定技能外国人支援計画を省令の基準に適合する形で行わなければならない」と規定されています。その省令の基準(特定技能基準省令第2条)において、下記の3つのうち、いずれかに該当することが要求されています。
① 過去2年間に中長期在留者の受入れ又は管理を適正に行った実績があること、及び、役員又は職員の中から、支援責任者及び事業所ごとに1名以上の支援担当者を選任していること ② 役員又は職員であって過去2年間に中長期在留者の生活相談業務に従事した経験を有するもののから、支援責任者及び事業所ごとに1名以上の支援担当者を選任していること ③ ①及び②に該当する者と同程度に支援業務を適正に実施することができる者として出入国在留管理庁長官が認めるものから、支援責任者及び事業所ごとに1名以上の支援担当者を選任していること 法務省:特定技能外国人受入れに関する運用要領(P73より) |
初めて外国人を受け入れる企業が要件をクリアするためには、③の項目に該当しなければなりません。これは提出された資料に基づき個別に判断がされますが、これまで日本人労働者を適正かつ適切に雇用してきた実績と、外国人に対して適切に支援が可能であることが求められます。労働関係法令を遵守しているのはもちろんのこと、労働基準監督署から是正勧告を受けていないことなどが必要です。
登録支援機関に1号特定技能外国人支援計画の全部を委託した場合は、この要件に適合しているとみなされます。
支援の中立性を確保すること
特定技能基準省令第2条2項4号において、企業に対して下記の要件をみたすことを求めています。
支援の適正性や中立性の確保の観点から、支援責任者及び支援担当者が、 ①1号特定技能外国人を監督する立場にないこと及び特定技能所属機関と当該外国人の間に紛争が生じた場合に少なくとも中立的な立場であること ②一定の欠格事由に該当しないこと 法務省:特定技能外国人受入れに関する運用要領(P77より) |
②については暴力団員ではないことや犯罪を犯していないことなどの一般的な内容です。問題となるのは①についてですが、1号特定技能外国人と異なる部署の職員であるなど、支援責任者・支援担当者が、当該外国人に対する指揮命令権を有しない者でなければなりません。したがって、1号特定技能外国人と形式上異なる部署の職員であっても、代表取締役など組織図を作成した場合に縦のラインにある者を、支援責任者や支援担当者に選任するのは避けましょう。
2.特定技能1号外国人に対して行う支援一覧
支援は大きく義務的支援と任意的支援の2つに分けることができます。ここでは義務的支援として認められるための最低限のラインを、支援ごとに解説します。
①事前ガイダンス
- 外国人が十分に理解できる言語で行われること
- 対面又はビデオ通話(Zoomなど)により本人であることの確認を行った上で実施すること
- 情報提供する事項を十分に理解するために、3時間程度行うこと(技能実習などから引き続き雇用する場合であっても、最低1時間以上の実施時間を確保)
- 情報提供内容としては下記の10項目を伝える
・ 業務内容、報酬額などの労働条件
・ 特定技能1号の在留資格で許可されている活動内容
・ 来日するために必要なビザ手続に関する事項
・ 保証金の支払や違約金に係る契約を結んでいないことの確認
・ 外国人が送り出し機関などに対して支払った、取次ぎ費用や準備金の金額と内訳の確認
・ 支援に要する費用について、特定技能1号外国人に負担させないことの確認
・ 来日時に空港から特定技能所属機関の事業所までの送迎を行うこと
・ 日本における住居の賃料及び、広さについての情報
・ 仕事や生活に関する相談又は苦情の申出先についての情報
・ 特定技能所属機関等の支援担当者氏名、連絡先
②出入国する際の送迎
- 入国する際については、空港と企業の事業所(又は外国人の住居)の間の送迎を行うこと
- 出国する際については、空港まで送迎を行い、保安検査場の前まで同行し、入場したことを確認すること
- 社用車や自家用車を利用して支援を実施するほか、鉄道やバス・タクシーなどの公共交通機関を利用して実施することも可能だが、費用については企業側が負担すること
③適切な住居の確保に係る支援・生活に必要な契約に係る支援
- 下記のいずれかによる方法で、外国人の希望に基づき支援を行うこと
・賃貸借契約のために、不動産や物件情報の提供を行い、必要に応じて当該外国人に同行すること。連帯保証人が必要な場合は、企業が連帯保証人になるか、家賃保証会社を確保し企業が緊急連絡先となること
・企業が自ら賃借人となって賃貸借契約を締結した上で、外国人の合意の下、住居として提供する。
・企業が所有する社宅等を、外国人の合意の下、住居として提供する - 居室の広さは7.5㎡以上確保すること(技能実習から変更する場合は寝室4.5㎡以上でも可)
- 銀行口座の開設、携帯電話の契約、その他の生活に必要な契約(電気・ガス・水道等のライフライン)に関し、必要な書類の提供及び窓口の案内を行い、必要に応じて当該外国人に同行するなど、当該各手続のサポートを行うこと
④生活オリエンテーションの実施
- 入国後、遅滞なく実施すること
- 外国人が十分に理解することができる言語により実施すること。テレビ電話や DVD等の動画視聴によるものでも可能であるが、質問があった場合に適切に応答できるようコミュニケーションがとれる体制を整備すること
- 十分に理解できるよう、8時間程度行うこと(技能実習などから引き続き雇用する場合であっても、最低4時間以上の実施時間を確保)
- 情報提供内容としては下記の20項目を伝える
・金融機関の利用方法
・医療機関などの利用方法
・交通ルール、交通機関の利用方法
・生活ルール・マナー
・生活必需品などの購入方法
・気象情報や災害時に行政から提供される災害情報の入手方法
・日本で違法となる行為
・苦情の申出先となっている支援担当者の連絡先
・相談又は苦情の申出をすることができる国や地方公共団体の機関の連絡先
・通訳人が配置されている医療機関の連絡先
・民間医療保険の案内
・トラブル対応や身を守るための方策
・緊急時の連絡先・場所、警察・消防・海上保安庁等への通報・連絡の方法
・気象情報・避難指示・避難勧告等の把握方法、災害時の避難場所
・入管法令や労働関係法令、労働安全衛生、未払賃金に関する知識
・入管法令に関する違反がある場合の相談先、連絡方法
・労働に関する法令違反がある場合の相談先、連絡方法
・特定技能雇用契約に反することがあった場合の相談先、連絡方法
・人権侵害があった場合の相談先、連絡方法
・年金の受給権に関する知識、脱退一時金制度に関する知識、それらの相談先、連絡方法
⑤日本語学習の機会の提供
下記のいずれかによる方法で、外国人の希望に基づき支援を行うこと
・日本語教室や日本語教育機関に関する入学案内の情報を提供し、必要に応じて1号特定技能外国人に同行して入学の手続のサポートを行うこと
・自主学習のための日本語学習教材やオンラインの日本語講座に関する情報を提供し、必要に応じて日本語学習教材の入手やオンラインの日本語講座の利用契約手続のサポートを行うこと
・外国人との合意の下、企業が日本語教師と契約して、日本語の講習の機会を提供すること
⑥相談又は苦情への対応
- 職業生活や日常生活、社会生活に関する相談を受けたときは、遅滞なく適切に応じ、必要な助言や指導を行うこと
- 相談内容に対応する適切な機関(地方出入国在留管理局、労働基準監督署等)を案内・同行して、必要な手続きの補助を行うこと
- 相談及び苦情への対応は、外国人が十分に理解することができる言語により実施すること
- 1週間当たり勤務日に3日以上、休日に1日以上対応し、相談しやすい就業時間外(夜間)などにも対応すること
⑦日本人との交流促進に係る支援
- 地方公共団体などが主催する地域住民との交流の場に関する情報の提供、地域の自治会等の案内を行うこと。参加する場合は、必要に応じて同行してサポートを行うこと
- 日本の文化を理解するために必要な情報として、地域の行事に関する案内を行うこと。必要に応じて同行してサポートを行うこと
⑧外国人の責めに帰すべき事由によらないで特定技能雇用契約を解除される場合の転職支援
- 求職活動を行うための有給休暇を付与すること
- 離職時に必要な行政手続き(国民健康保険や国民年金に関する手続等)について情報を提供すること
- 倒産などにより支援が実施できなくなる場合は、代わりの支援を行う者を確保すること
- 下記の支援のいずれかを行うこと
・所属する業界団体や関連企業等を通じて、次の受入先に関する情報を提供すること
・公共職業安定所や職業紹介事業者等を案内し、必要に応じて外国人に同行してサポートを行うこと
・適切に職業相談・職業紹介が受けられ、円滑に就職活動が行えるよう推薦状を作成すること
・職業紹介事業を行うことができる場合は、就職先の紹介あっせんを行うこと④倒産などにより支援が実施できなくなる場合は、代わりの支援を行う者を確保すること
⑨定期的な面談の実施、行政機関への通報
- 労働状況や生活状況を確認するため、3ヶ月に1度、テレビ電話ではなく、必ず対面で面談を実施すること。外国人本人だけでなく、外国人直属の上司(又は施設代表者)も面談を受けること
- 外国人が十分に理解できる言語で行うこと
- 労働基準法(長時間労働、賃金不払残業など)その他の労働に関する法令(最低賃金法、労働安全衛生法など)の規定に違反していることが発覚した際には、行政機関へ速やかに通報すること
支援内容は全部で9つと多いですが、あらかじめ準備をしっかりと行えば、自社で十分に賄えることができると言えるでしょう。
3.申請時の準備と注意点
登録支援機関を利用しない場合、特定技能ビザの申請準備において、いくつか注意しなければならないポイントがあります。
余裕を持ったスケジュール管理を
特定技能制度では、日本での手続きだけでなく、相手国の手続きが必要な場合があります。必要書類の発行に手間取ったり、審査期間が予定より長くなったりと、不測の事態が生ずることも多いため、スケジュール管理は余裕を持って行うようにしましょう。
人材紹介会社を利用する際には、あらかじめ相手国側で必要な手続きなどを教えてもらい、全体の行程を踏まえた上で、スケジュールを立てることお勧めします。
事前ガイダンスの実施と健康診断書の翻訳
事前ガイダンスを実施した上で、雇用契約を締結し、特定技能ビザの申請を行います。外国人に対して行う支援は、入国前からはじまるので注意が必要です。相手国まで実際に訪問し採用を行う場合は、事前ガイダンスも一緒のタイミングで行う方が、効率良く進められます。
また特定技能ビザ申請時の必要書類には、外国人の健康診断書も含まれます。必要な健康診断の項目を満たしているか確認した上で、日本語の翻訳を作成してください。
1号特定技能外国人支援計画書の作成について
登録支援期間を利用しない場合、特定技能ビザ申請時に自社で作成する必要がある書類は、下記になります。
・支援責任者の就任承諾書及び誓約書【PDF】【word】
・支援責任者の履歴書【PDF】【word】【記載例】
・支援担当者の就任承諾書及び誓約書【PDF】【word】
・支援担当者の履歴書【PDF】 【word】 【記載例】
・事前ガイダンスの確認書【PDF】【word】
・1号特定技能外国人支援計画書【PDF】【excel】【記載例】
(その他の特定技能ビザ申請時に必要な書類については、『「特定技能」受入れ申請に必要な書類まとめ【難易度付き】』をご参照ください。)
この中で、一番作成に時間を要するのが、1号特定技能外国人支援計画書です。「特定技能1号外国人に対して行う支援一覧」で説明した支援を、いつどのように行うか記載しなければなりません。あらかじめ、支援担当者や責任者とともに、具体的な支援の実施方法を決めておく必要があります。
4.特定技能で採用を検討中の企業様へ
この記事では登録支援機関に支援を委託せずに、外国人を受け入れる方法をご説明しました。
これまで予算が厳しく技能実習や特定技能での採用をためらわれていた事業所様でも、この方法を使えば受入れ可能になるかもしれません。社内の実情に応じて、自社での全部支援、一部委託を検討してみてください。
kedomoでは、国内外からの特定技能資格取得者の募集が可能です。「介護」や「外食」にも力を入れており、インドネシア、ベトナム、ミャンマーの方をご紹介できます。もちろん登録支援機関としてもサポートできますので、採用をご検討の際は、ぜひ気軽にご相談ください。
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<参考文献>
『特定技能外国人の受入れに関する運用要領』
『1号特定技能外国人支援に関する運用要領』
ともに法務省ホームページより【法務省:特定技能運用要領・各種様式等】
<参考ページ>
『「特定技能」資格取得者のご紹介』
在留資格である特定技能の一般的な説明。採用までの流れや就業可能職種など分かりやすく解説しています。
『特定技能「介護」で外国人を採用する方法【分かりやすく解説】』
人手不足で悩まれている方が多い介護職種に絞って説明しています。