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外国人社員が受け取れる脱退一時金(国民年金・厚生年金)

日本国内で雇用していた外国人社員が会社を退職し母国に帰る際、条件に当てはまれば今まで支払ってきた年金保険料の一部が払い戻しされます。これを脱退一時金と言います。
脱退一時金はこちらから請求しないと払い戻しがなされません。脱退一時金の還付条件や必要書類などを事前に確認しておき、外国人社員が退職する時に慌てないように備えてください。

1.外国人も年金保険料を支払わなければいけない

まず、外国人も年金保険料を支払わなければいけないというのが基本的なルールです 。 日本の年金制度は「日本に居住している20歳以上60歳未満の方」全てが対象であると定められています。国籍は関係ありませんので、日本国内に住み働いている外国人も年金制度の対象です。なお、年金への加入は「義務」なので、「外国人は年金制度に加入してもいい」のではなく、「外国人も絶対に加入しなければいけない」ものです。

外国人を雇用する会社は、日本人社員の厚生年金と同じような処理が必要です。外国人に支払う給料から厚生年金保険料の半額を徴収し、会社が保険料の半額を負担する必要があります。

2.脱退一時金(国民年金・厚生年金)の受け取り条件

脱退一時金は、退職し帰国する外国人の誰もが受け取れるものではありません。雇用されている外国人社員が条件に当てはまるかどうかを確認してください。

脱退一時金を請求できる期間

日本から出国し、日本国内に外国人の住所がなくなってから2年以内に請求できます。

脱退一時金の請求先

国民年金・厚生年金の脱退一時金は、日本年金機構に請求できます。

受け取れる資格

(ア)国民年金

  1. 日本国籍でない方
  2. 老齢基礎年金の受給資格期間を満たしていないこと 
  3. 国民年金に加入していないこと
  4. 第1号被保険者であった期間が、以下の全てを足して6ヶ月以上あること
  • 保険料納付済みの月数
  • 保険料1/4免除の月数×3/4
  • 保険料半額免除の月数×1/2
  • 保険料3/4免除期間×1/4

(イ)厚生年金

  1. 日本国籍でない方
  2. 老齢厚生年金などの受給権を満たしていないこと 
  3. 厚生年金保険や共済組合などの加入期間の合計が6ヶ月以上あること

老齢厚生年金の内容や受給権の詳細については、最寄りの年金事務所または、ねんきんダイヤルにお尋ねください。

3.脱退一時金(国民年金・厚生年金)の請求に必要な書類

脱退一時金を請求するためには、「請求書」と「添付書類」が必要です。また代理人による請求も可能です。その際は「委任状」を添付してください。

脱退一時金請求書

日本年金機構HPに書式があります。ダウンロードしてお使いください。

パスポートの写し

外国人社員の氏名、生年月日、国籍、署名、在留資格が確認できるページをコピーしてください。

住民票の除票の写し

平成24年以降に来日され、帰国前に市区町村に「転出届」を提出している場合は必要ありません。それ以外の方は日本に住居がなくなった証明として住民票の除表の写しが必要です。

脱退一時金を振り込む口座がわかるもの

銀行名・支店名・支店所在地・口座番号・銀行が発行した、口座名義人が確認できる書類。日本の銀行でも可。

国民年金手帳など

基礎年金番号が確認できるもの

委任状

本人ではなく、代理人が請求する場合のみ必要。日本年金機構HPに書式があります。ダウンロードしてお使いください。

4.脱退一時金 (国民年金・厚生年金) 請求のポイントと注意事項

脱退一時金を請求する際のポイントと注意事項をまとめました。

委任状があれば代理人でも請求できる

外国人社員に代わり脱退一時金を請求する際は委任状が必要です。委任状の様式は決まっていませんが、日本年金機構HPに様式が掲載されていますので、ダウンロードして使用すると便利です。

帰国して2年以上経つと脱退一時金を請求できない

請求権は日本に住居を有しなくなってから2年以内ですので、2年を超えてしまうと脱退一時金の請求ができません。外国人社員の退職・帰国と同時に請求できるよう前もって準備しておくことが必要です。

外国人社員の帰国前に書類を揃えておくとよい

必要書類にはパスポートの写しや銀行口座(外国の口座でOK)が必要です。日本を離れてからでは連絡も取りにくくなるため、外国人社員が日本にいる間に書類を揃えておいてください。

年金を受け取ったことがある外国人は脱退一時金を受け取れない

条件を満たしていても、障害基礎年金や障害厚生年金などの年金を受け取ったことがある方は、脱退一時金を受け取ることができませんので、ご注意ください。

老齢年金の受給資格期間が10年以上ある外国人は、脱退一時金を受け取ることができない

将来、日本の老齢年金が受け取れるため脱退一時金を請求することができません。長期間にわたり日本国内で年金保険料を支払ってきた外国人社員は、年金が受け取れるのか確認が必要です。詳しくは最寄りの年金事務所でご相談ください。

外国人の母国と、母国での年金加入期間によっては、脱退一時金ではなく年金を受け取れる可能性がある

母国を離れ外国に在住する人の「保険料の二重負担を防止」するため「社会保障協定」というものが日本と各国の間で結ばれています。社会保険に加入している期間が合算されるため、脱退一時金ではなく年金を受け取れる場合があります。年金を受け取る場合は、脱退一時金を受け取ることができません。雇用されている外国人社員が「社会保障協定」を結んでいる国の国民かどうか下記の表でご確認ください。

社会保障協定発行済みの国
ドイツ、イギリス、韓国、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、ハンガリー、インド、ルクセンブルク、フィリピン、スロバキア、中国

支給金額は36ヶ月を上限として計算される

36ヶ月つまり3年以上日本で年金保険料を支払っていたとしても、3年分を上限として計算されます。そのため8年働いて帰国する方と、3年働いて帰国する方で、脱退一時金の金額がほとんど変わらない場合もあります。

5.脱退一時金(国民年金・厚生年金)の具体的な計算方法や金額

脱退一時金の計算方法は国民年金か厚生年金かで異なります。計算方法を把握しておくと、帰国する外国人社員におおよその還付金額を伝えることができます。

国民年金

国民年金の脱退一時金の金額は、「最後に保険料を納付した年度」と、「保険料納付月数」に応じた金額となります。脱退一時金の金額一覧は日本年金機構HPに掲載されています。

例:平成29年4月から平成31年3月末まで国民年金を満額納付していた場合

この場合は、「最後に保険料を納付した年度」は「平成31年度」。「保険料納付月数」は「24ヶ月」となります。
これを日本年金機構の表に当てはめると「196,080円」です。従ってこの場合受け取れる脱退一時金の額は「196,080円」となります。所得税の徴収はありません。

厚生年金

厚生年金の脱退一時金の金額は、被保険者であった期間の平均標準報酬額×支給率で、算出されます。

①平均標準報酬額とは?
以下のAとBを足して、被保険者であった期間の月数で割った金額になります。標準報酬月額は日本年金機構及び協会けんぽなどの健康保険組合HPに掲載されています。

A:平成15年4月より前の標準報酬月額×1.3
B:平成15年4月以降の標準報酬月額+標準賞与額

②支給率とは?
CまたはDの1/2×下記の表の数

C:労働者が2〜9月に退職し帰国する場合→2年前の10月の保険料率
D:労働者が10〜1月に退職し帰国する場合→前年10月の保険料率

被保険者の期間 かける数

6月以上12月未満

6

12月以上18月未満

12

18月以上24月未満

18

24月以上30月未満

24

30月以上36月未満

30

36月以上

36

例:平成29年4月から平成31年3月末までの間、平均給与20万円+ボーナス30万円×年2回で、厚生年金を満額納付していた場合

平均給与20万円の場合の標準報酬月額・・・期間中、常に14等級 20万円
ボーナス30万円の場合の標準賞与額・・・30万円

(20万円×12ヶ月×2年+30万円×2回×2年)÷24ヶ月
=(600万円)÷24ヶ月 =25万円

25万円が平均標準報酬月額となります。平成31年3月に退職しているので、平成29年10月度の厚生年金保険料率を確認→18.3%

25万円×18.3%×1/2×24ヶ月=549,000円

この場合「549,000円」が脱退一時金となります。
ここから所得税20.42%が差し引かれ、436,894円が実際に振り込まれる金額となります。 ここで差し引かれた所得税は、還付手続きをすることで後日口座へ振り込んでもらえます。詳しくは最寄りの年金事務所にお尋ねください。

6.まとめ

脱退一時金は、条件に当てはまる外国人なら誰でも受け取る権利のあるお金です。外国人社員が帰国する際には、請求権についてお伝えいただきますようお願いいたします。代理人でも請求が可能ですので、会社が代わって請求作業を行うこともできます。

なお、制度は変更されることがありますので、最新情報は最寄りの年金事務所ねんきんダイヤルにご相談されることをお勧めします。
(この記事は2020年1月現在の法令に準拠しています)

その他の保険(雇用保険、労災保険、健康保険、介護保険)については、こちらのコラム(『外国人を採用した時の保険手続き(厚生年金・健康保険・介護保険・労働保険)』)に掲載しています。

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