製造業で外国人を採用するなら、在留資格「特定技能」が現実的な選択肢です。受入人数に上限がなく、付随業務も任せられるため、即戦力として現場に入ってもらえます。
ただし、2024年に分野名が「工業製品製造業」に変わり、業務区分も10区分に再編されました。2025年末からはJAIM(工業製品製造技能人材機構)への加入も必須になっています。制度が変わったタイミングなので、古い情報のまま進めると手続きが通らないことがあります。この記事では、製造業の採用担当者向けに、受入要件・対象業種・試験・採用ルートを最新情報で整理しました。
この記事でわかること
- 工業製品製造業で受け入れ可能な10の業務区分と対象業種
- 受入企業に求められる要件とJAIMへの加入手続き・年会費
- 技能試験・日本語試験の内容と技能実習2号修了者の免除条件
- 技能実習生・留学生・海外人材の3つの採用ルート
目次
1.特定技能「工業製品製造業」とは
特定技能は、人手不足が深刻な産業分野で、一定の技能と日本語力をもつ外国人を受け入れる在留資格です。2019年に創設され、現在は16分野が対象となっています。
製造業は当初「素形材産業」「産業機械製造業」「電気・電子情報関連産業」の3分野に分かれていましたが、2022年5月に統合、2024年3月の閣議決定で「工業製品製造業分野」に名称変更されました。
出入国在留管理庁の速報値によると、2025年6月末時点で工業製品製造業の特定技能在留者は45,279人です。飲食料品製造業に次いで2番目に多く、介護(44,367人)や建設(38,578人)を上回っています。
参考:特定技能制度運用状況(令和7年6月末)(出入国在留管理庁)
特定技能1号と2号、技能実習との違い
特定技能1号は通算5年まで、家族帯同は不可。2号は在留期間の上限がなく、配偶者・子の帯同も可能です。工業製品製造業では「機械金属加工」「電気電子機器組立て」「金属表面処理」の3区分で2号が取れるため、長期雇用を前提にした採用もできます。
技能実習と比べると、特定技能は受入人数に上限がなく(建設・介護を除く)、付随業務も担当できます。技能実習2号を良好に修了していれば、対応する区分では試験免除で特定技能に移行できます。
なお、技能実習制度は2027年から「育成就労制度」に移行する予定です。育成就労修了者が特定技能へ進む流れが前提になっているため、中長期の採用計画を立てるなら押さえておいてください。
2.工業製品製造業の対象業種と業務区分(10区分)
工業製品製造業で特定技能外国人を受け入れるには、自社の事業が日本標準産業分類の該当業種にあてはまっている必要があります。事業の継続性は、直近1年間の製造品出荷額等で判定されます。
業務区分は10区分に再編
2022年の統合前は19の業務区分に分かれており、「鋳造」で受け入れた人に「機械加工」を担当させることはできませんでした。現在は以下の10区分に整理され、同じ区分内であれば複数の作業を担当できます。
| 業務区分 | 主な対象業務 |
|---|---|
| 機械金属加工 | 鋳造、鍛造、ダイカスト、機械加工、金属プレス加工、鉄工、工場板金、仕上げ、機械検査、機械保全、プラスチック成形、塗装、溶接、工業包装、金属熱処理、強化プラスチック成形など |
| 電気電子機器組立て | 電子機器組立て、電気機器組立て、プリント配線板製造、機械加工、仕上げ、機械検査、機械保全、プラスチック成形、工業包装など |
| 金属表面処理 | めっき、アルミニウム陽極酸化処理など |
| 紙器・段ボール箱製造 | 紙器・段ボール箱の製造工程 |
| コンクリート製品製造 | コンクリート製品の製造工程 |
| RPF製造 | 古紙・廃プラスチックを原料とした固形燃料(RPF)の破砕・成形工程 |
| 陶磁器工業製品製造 | 陶磁器製品の製造工程 |
| 印刷・製本 | オフセット印刷などの印刷業務、製本・印刷物加工の工程 |
| 紡織製品製造 | 紡績運転、織布運転、染色、ニット製品製造、たて編ニット生地製造、カーペット製造 |
| 縫製 | 婦人子供服製造、紳士服製造、下着類製造、寝具製作、帆布製品製造、布はく縫製、座席シート縫製 |
このうち特定技能2号の対象は、当面「機械金属加工」「電気電子機器組立て」「金属表面処理」の3区分です。
繊維業には上乗せ要件がある
「紡織製品製造」「縫製」の2区分は、過去の法令違反事例が多かったことを踏まえて、ほかの区分より厳しい上乗せ要件が設定されています。主な内容は次のとおりです。
- 勤怠管理を電子的に行うこと(紙からの転記やExcelでのCSV編集は不可)
- 賃金の適正な支払いを書面で証明すること
- 取引先に対し適正取引を確約する契約を締結すること
これらの要件は、JAIM・経済産業省の案内に具体的な運用ルールが示されています。繊維関連で受け入れを検討する場合は、必ず最新の上乗せ基準を確認してください。
付随業務も担当できる
特定技能では、主たる業務のほかに、日本人が通常行っている付随業務も担当できます。たとえば次のような作業です。
- 原材料・部品の調達・搬送作業
- 各区分の前後工程の作業
- クレーン・フォークリフトなどの運転作業
- 清掃・保守管理作業
ただし、受け入れた区分と異なる区分の主たる業務を担当させることはできません。たとえば「電気電子機器組立て」で受け入れた人に、「機械金属加工」区分の主たる業務を常時任せることは認められていません。
kedomoでも、技術・人文知識・国際業務ビザで採用したエンジニアに、CAD設計と異なる単純作業を続けさせたために、在留資格の更新が難しくなった事例を耳にしたことがあります。特定技能は付随業務の範囲が広めに認められますが、それでも採用区分と無関係な業務を長時間任せるのはリスクになります。入社前に作業工程や担当範囲を明確に決めておくことをおすすめします。
3.製造業で特定技能外国人を受け入れる企業の要件
特定技能で外国人を採用するには、雇用契約の内容、受入れ機関としての基準、支援計画の実施体制の3つを満たす必要があります。
雇用契約で押さえるべきポイント
雇用契約の基準は複数ありますが、製造業の現場で特に注意すべきは報酬の扱いです。特定技能では同じ業務に従事する日本人と同等以上の報酬が法的要件になっています。「外国人だから安く雇える」は誤りで、違反すれば受入れ停止のリスクがあります。
そのほか、所定労働時間が日本人と同等であること、一時帰国を希望した場合に有給休暇を取得させること、帰国費用を本人が負担できないときは企業が負担することなどが定められています。
受入れ機関(企業)の基準
受入企業には、労働・社会保険の法令遵守、1年以内に非自発的離職や行方不明者を出していないこと、欠格事由に該当しないことなど、計13の基準があります。多くの企業はすでに満たしている内容ですが、工業製品製造業で特に注意が必要なのは次の2点です。
- 報酬は預金口座への振込みで支払うこと
- JAIM(一般社団法人工業製品製造技能人材機構)に加入していること
JAIM(工業製品製造技能人材機構)への加入が必須
従来、製造業分野では「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」が受入企業の名簿管理を行っていましたが、2025年5月より、新たな民間団体として一般社団法人工業製品製造技能人材機構(JAIM)が経済産業大臣の登録を受けました。現在は工業製品製造業で特定技能外国人を受け入れるすべての事業所にJAIMへの賛助会員入会が義務づけられています。
JAIMに加入していない事業所は、特定技能の在留資格申請が認められません。過去に協議・連絡会に入会済みだった事業所も、改めてJAIMへの移行手続きが必要です。
JAIMの年会費(2026年度・12か月分)
| 区分 | 正会員団体に所属 | 正会員団体に未所属 |
|---|---|---|
| 中小企業 | 60,000円 | 63,000円 |
| 大企業 | 80,000円 | 83,000円 |
中小企業割引を受けるには、中小企業庁が定める中小企業の定義(製造業は資本金3億円以下または従業員数300人以下)にあてはまることを、資本金または従業員数の資料で証明する必要があります。正会員団体所属の割引は、自社が加入している業界団体がJAIMの正会員になっている場合に適用されます。加入団体が正会員かどうかはJAIMのサイトで確認できます。
入会手続きは、JAIMの公式サイトから賛助会員入会ページでオンライン申請する流れです。申請から名簿掲載まで数週間〜数か月かかることもあるため、特定技能の在留資格申請を予定している場合は早めに手続きを進めてください。
参考:一般社団法人工業製品製造技能人材機構(JAIM) 参考:賛助会員入会(JAIM)
支援計画の適正な実施確保に関する基準
1号特定技能外国人には、日本での生活を円滑に送れるよう、受入企業が義務的支援を10項目実施する必要があります。この支援は登録支援機関に委託することもできますが、自社で行う場合は一定の体制基準を満たす必要があります。
自社で支援を実施する場合の要件は、『【特定技能】登録支援機関を利用せず、自社で採用をする方法』で解説しています。
4.製造業の特定技能試験(技能・日本語)
工業製品製造業で特定技能1号を取得するには、次の両方に合格する必要があります。
- 製造分野特定技能1号評価試験(技能試験)
- 日本語試験(日本語能力試験N4以上、または国際交流基金日本語基礎テストA2以上)
製造分野に関連する技能実習2号を良好に修了している人は、対応する業務区分であれば技能試験・日本語試験ともに免除されます。
技能試験(製造分野特定技能1号評価試験)
製造分野特定技能1号評価試験は、学科試験と実技試験で構成されています。2023年度から試験区分が見直され、受験者は「機械金属加工」「電気電子機器組立て」「金属表面処理」のいずれかの区分を選び、その中で具体的な技能(鋳造、溶接、電子機器組立てなど)を選択して受験する形式になりました。
学科試験はCBT方式(コンピューターを使った試験)またはペーパー方式で行われ、合格基準は総得点の65%以上です。実技試験の形式は区分ごとに異なります。
試験は日本国内のほか、インドネシア、ベトナム、フィリピン、タイ、ネパールなど複数の国で実施されています。出入国在留管理庁の令和7年6月末時点の運用状況によると、工業製品製造業分野の技能試験は海外4か国で実施され、累計の合格者数は2,673人となっています。最新の試験日程・実施国・受験料は、経済産業省の分野ポータルサイトで確認できます。
日本語試験
日本語能力試験(JLPT)のN4以上、または国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)のA2以上に合格すれば要件を満たします。JFT-Basicは月に複数回受験でき結果も早いため、急ぎの採用ではこちらを受ける方が多いです。JLPTは年2回の実施で結果発表まで約2か月かかります。
5.製造業で特定技能外国人を採用する3つのルート
製造業で特定技能人材を採用するルートは、大きく分けて3つあります。自社の状況に合うものを選んでください。
①技能実習生からの移行
最も一般的なルートです。対応する業務区分であれば、技能実習2号を良好に修了した人は無試験で特定技能1号に移行できます。
なお、建設や造船・舶用工業など他分野の技能実習で溶接を修了した人が、工業製品製造業の特定技能に移行するケースもあります。同じ「溶接」という職種名でも、製造する製品や求められる精度は現場によって異なります。kedomoの経験では、即戦力として期待する場合は、採用前に技術確認や現場見学を行っておくと、入社後のギャップを減らせます。
現在自社で実習中の場合
本人の意向を確認のうえ、在留資格変更許可申請を行います。スムーズに進みやすい反面、雇用契約の条件が技能実習と異なるため、給与・住居・支援内容の見直しが必要です。
過去に雇用していた実習生が帰国済みの場合
本人と直接、または送り出し機関・人材紹介会社を通じて連絡を取り、特定技能として再雇用する方法があります。帰国後に連絡がつかなくなるケースも多いため、帰国時に連絡手段を確保しておくと後の採用がしやすくなります。
②留学生からの採用
日本の専門学校や大学を卒業予定の留学生が、特定技能試験を受けて就職するルートです。技術・人文知識・国際業務の就労ビザが取りにくい専攻・学校の学生を中心に、特定技能を選ぶ動きがあります。
留学生が多い学校に求人票を送付する、留学生向けの合同説明会に参加する、人材紹介会社に依頼する、といった方法があります。
③海外からの採用
試験実施国で試験に合格した人を、海外から直接採用するルートです。インドネシア、ベトナム、フィリピン、ミャンマー、ネパールなどで技能試験が実施されており、現地の送り出し機関や人材紹介会社を通じて候補者を探します。
海外からの採用では、在留資格認定証明書の交付、現地での査証申請、渡航手続きなどが必要で、採用決定から入社まで3か月以上かかることが一般的です。スケジュールに余裕をもって進めてください。
「海外から新規に採用する」と聞くと不安に感じる企業もあります。ただ、海外在住者の中には、過去に日本で技能実習を修了して帰国し、再び日本で働きたいと考えている方もいます。こうした方は日本語や日本の仕事の進め方、生活にすでに慣れているため、来日直後から即戦力になりやすいです。kedomoでも、帰国済みの元実習生を特定技能としてご紹介した実績があります。海外採用を検討する際は、まず元実習生に絞って候補者を探してみるのもひとつの方法です。
kedomoが支援している地方の製造業では、若い外国人材の採用後に「職場が明るくなった」「既存社員の定着率も上がった」という声を多くいただいています。一方で、入社前の仕事内容の説明が不十分だと早期離職につながります。工程や寮の写真・動画を事前に見せるだけで、ミスマッチはかなり減らせます。
もうひとつ、溶接や鍛造など暑い環境で体を動かす業務の場合は、イスラム教徒の方のラマダン(断食月)期間中の対応を採用前に確認しておくことをおすすめします。ラマダンの時期には日中の飲食を避ける方がいますが、高温環境での作業中に水分を取れないと脱水症状につながる危険があります。特に製造の高温での作業経験がない方には事前に水分補給ができるかを確認しておくとトラブルを防げます。
6.まとめ:製造業の特定技能採用はkedomoへ
特定技能「工業製品製造業」は、製造現場の人手不足に対応できる現実的な選択肢です。一方で、JAIMへの加入と年会費負担、業務範囲の管理、繊維業の上乗せ要件など、押さえるべきルールも細かくなっています。
kedomoでは、工業製品製造業を含む特定技能人材の紹介と、登録支援機関としての受入支援をワンストップで行っています。インドネシア・ミャンマー・ベトナム・韓国など多国籍の人材ネットワークをもち、初回のご相談から採用後の支援まで一貫して対応できます。
kedomoに委託するメリット
- 人材募集から義務的支援までワンストップで対応
- インドネシア・ミャンマー・ベトナム・韓国など多国籍の人材ネットワーク
- 申請等取次の有資格者が在籍し、入管手続きの事務負担を軽減
個別相談(無料)はこちら → お問い合わせフォーム
よくある質問
Q 「工業製品製造業」と「素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業」は同じものですか?
同じ分野です。2022年5月に製造3分野が統合され、2024年3月の閣議決定で分野名が「工業製品製造業」に変更されました。
Q 特定技能で製造業の外国人を受け入れるのに、JAIMへの加入は必須ですか?
必須です。2025年12月25日で経過措置が終了し、JAIMの賛助会員名簿に掲載されていない事業所は在留資格の申請が認められません。
Q JAIMの年会費はいくらですか?
2026年度は中小企業60,000円、大企業80,000円(正会員団体に所属する場合)です。未所属の場合はそれぞれ3,000円加算されます。
Q 技能実習2号を修了していれば試験なしで特定技能に移行できますか?
対応する業務区分であれば、技能試験・日本語試験ともに免除されます。ただし、異なる業務区分への移行の場合は技能試験の合格が必要です。
Q 製造業の特定技能に受入人数の上限はありますか?
工業製品製造業では、1社あたりの受入人数に上限は設けられていません。ただし、分野全体の受入れ見込み数は設定されています。
Q 特定技能2号は製造業でも取得できますか?
「機械金属加工」「電気電子機器組立て」「金属表面処理」の3区分で2号の取得ルートがあります。2号を取得すると在留期間の上限がなくなり、家族帯同も可能になります。





