kedomoで外国人社員の採用をお手伝いしていると、入社手続きの段階で「源泉所得税の計算は日本人と同じでいいのか」「海外の家族は扶養に入れられるのか」といった質問をいただくことがよくあります。結論から言えば、外国人社員の所得税と年末調整は基本的に日本人社員と同じ仕組みです。ただし、来日してからの期間によって税率が大きく変わる点と、海外に住む家族を扶養に入れる際の書類要件は、外国人採用ならではの注意点です。
このコラムでは、外国人社員の所得税の区分と源泉徴収のポイント、年末調整で特に気をつけたい国外居住親族の扶養控除のルールをまとめました。2023年・2025年の税制改正で変わった点も含めて解説しています。
この記事でわかること
- 外国人社員の居住者・非居住者の区分と源泉所得税率の違い
- 年末調整で国外居住親族を扶養に入れるための条件と必要書類
- 2023年・2025年の税制改正で変わったポイント
執筆:株式会社kedomo(登録支援機関・外国人材紹介)
目次
1.外国人社員も給与から源泉所得税を徴収する
所得税法上、会社が人を雇って給与を支払う場合、源泉所得税を給与から差し引いて国に納付する義務があります。この義務に労働者の国籍は関係ありません。
そのため、外国人社員も日本人社員と同じように、毎月の給与から源泉所得税が天引き(源泉徴収)されます。年末になると、毎月差し引いた源泉所得税の合計額と、実際の年間所得税額との差額を精算します。これが年末調整です(非居住者は年末調整の対象外です)。
外国人社員を初めて採用する企業にとっては「何か特別な計算が必要なのでは」と思われがちですが、居住者に該当する外国人社員であれば、日本人社員と同じ源泉徴収税額表を使って計算します。
2.外国人社員の区分と源泉所得税率
外国人社員の源泉所得税率は、所得税法上の「区分」によって異なります。採用時に区分を正しく判定し、適切な税率を適用することが大切です。
居住者と非居住者の区分
外国人社員は、以下の3つに区分されます。在留資格の種類(技術・人文知識・国際業務、特定技能など)にかかわらず、滞在期間で判定されます。
居住者
- 永住者:日本国籍がある人、または過去10年以内に日本に住所や居所があった期間が合計5年以上の外国人
- 非永住者:日本国籍がなく、過去10年以内に日本に住所や居所があった期間が合計5年未満の外国人(非居住者を除く)
非居住者
- 日本に住所がなく、かつ日本に1年以上居所がない外国人
参考:「No.2012 居住者・非居住者の判定(複数の滞在地がある人の場合)」(国税庁)
源泉所得税率の違い
| 外国人社員の区分 | 源泉所得税率 | 年末調整 |
| 永住者・非永住者(居住者) | 日本人社員と同じ(税額表による) | 必要 |
| 非居住者 | 一律 20.42% | 不要 |
参考:「No.2884 非居住者等に対する源泉徴収・源泉徴収の税率」(国税庁)
計算例:給与20万円・扶養家族なしの場合
居住者と非居住者では、同じ給与額でも手取りに大きな差が出ます。
- Aさん(居住者・非永住者):源泉所得税額 4,460円(2026年分源泉徴収税額表による)
- Bさん(非居住者):200,000円 × 20.42% = 40,840円
kedomoでも、来日直後の研修期間中に非居住者区分だった方が居住者に切り替わるタイミングで「急に手取りが増えた」と驚かれるケースがあります。外国人社員に給与明細の内容を説明する際には、この区分の違いを伝えておくとトラブルを防げます。
3.外国人社員の年末調整の注意点
居住者に該当する外国人社員は、日本人社員と同様に年末調整を行います。作業の大部分は日本人と変わりませんが、外国人社員特有の注意点が国外居住親族の扶養控除です。
国外居住親族を扶養に入れるための基本ルール
日本国内に家族がいる場合、配偶者や子どもの所得が一定額以下であれば扶養控除の対象になります。この点は日本人も外国人も同じです。
一方、家族が日本国外に住んでいる場合は、「親族関係書類」と「送金関係書類」の2つを提出しなければ扶養控除を受けられません。
- 親族関係書類:戸籍の附票の写し+パスポートの写し、または外国政府発行の出生証明書・婚姻証明書など、親族関係を証明する書類
- 送金関係書類:金融機関の外国送金依頼書の控え、または本人名義のクレジットカード(家族カード)の利用明細書など、生活費の送金を証明する書類
送金関係書類がない親族は扶養に入れられません。たとえば母親宛に送金していても、銀行口座を持たない弟妹宛に送金の記録がなければ、弟妹は扶養としてカウントできません。詳しくは外国人社員が海外の家族へ送金する方法と年末調整(扶養控除)をご覧ください。
参考:「国外居住親族に係る扶養控除等の適用について」(国税庁)
2023年改正:30歳以上70歳未満の国外居住親族に追加要件
2023年1月から、30歳以上70歳未満の国外居住親族を扶養控除の対象にするための要件が厳格化されました。この年齢層の親族は、以下のいずれかに該当しなければ扶養控除の対象外です。
- 留学により国内に住所・居所を有しなくなった者(留学ビザ等書類の提出が必要)
- 障害者に該当する者
- その年に38万円以上の生活費・教育費の送金を受けている者(38万円以上送金書類の提出が必要)
kedomoが支援する特定技能や技人国で来日した外国人社員は、海外に住む家族(特に30代〜60代の兄弟姉妹や両親)を扶養に入れたいケースが多いです。この改正以降、年間38万円以上の送金実績がないと扶養控除を受けられないため、年末調整前に送金書類が揃っているか、早めに確認するようお伝えしています。
16歳未満および70歳以上の国外居住親族は、従来どおり親族関係書類と送金関係書類で扶養の対象にできます。
4.2025年改正:年末調整の変更点
2025年の税制改正では、基礎控除・給与所得控除の引上げと、特定親族特別控除の新設が行われました。2025年12月の年末調整から適用されます。
基礎控除・給与所得控除の引上げ
基礎控除は、合計所得金額2,350万円以下の場合に58万円に引き上げられました(改正前48万円)。給与所得控除の最低保障額も55万円から65万円に引き上げられています。
この改正に伴い、扶養親族の合計所得金額の要件も48万円以下から58万円以下に変更されました。国外居住親族の扶養控除を判定する際にも、この新しい所得要件が適用されます。
特定親族特別控除の新設
19歳以上23歳未満の親族で、合計所得金額が58万円超123万円以下の場合に、所得に応じて最高63万円の控除が受けられる制度です。外国人社員の子どもが日本の大学に通いながらアルバイトをしている場合などに該当する可能性があります。
年末調整で適用を受けるには、「給与所得者の特定親族特別控除申告書」を会社に提出してもらう必要があります。参考:「令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について」(国税庁)
源泉徴収税額表の改正
2026年分以降の源泉徴収税額表が改正されています。2026年1月支給分の給与からは新しい税額表を使う必要があるため、給与計算ソフトのバージョンを確認してください。
5.まとめ
- 外国人社員も日本人社員と同じく、給与から源泉所得税を徴収する義務がある
- 居住者(永住者・非永住者)は日本人と同じ税額表で計算し、非居住者は一律20.42%
- 国外居住親族の扶養控除には「親族関係書類」と「送金関係書類」の提出が必要
- 2023年改正により、30歳以上70歳未満の国外居住親族は追加要件(留学・障害者・38万円以上送金)が必要
- 2025年改正で基礎控除・給与所得控除が引き上げられ、扶養親族の所得要件も変更された
税制は毎年のように改正されるため、顧問税理士や所轄の税務署に確認しながら対応することをおすすめします。この記事は2026年4月時点の法令に基づいています。
kedomoは外国人に特化した人材紹介会社・登録支援機関です。特定技能やエンジニア採用にも対応しています。外国人を採用した時の保険手続きや脱退一時金、離職時の手続きのコラムもご覧ください。
Q&A
Q 外国人社員の所得税は日本人社員と同じですか?
A 居住者に該当する外国人社員は、日本人社員と同じ源泉徴収税額表で計算します。 ただし、非居住者に該当する場合は一律20.42%です。
Q 居住者と非居住者はどのように判定しますか?
A 日本に住所があるか、または1年以上居所があるかで判定します。 在留資格の種類ではなく、滞在期間と生活の本拠がどこにあるかがポイントです。
Q 国外に住む家族を扶養に入れるにはどうすればいいですか?
A 「親族関係書類」と「送金関係書類」を年末調整時に提出します。 30歳以上70歳未満の親族は、留学生・障害者・年38万円以上の送金のいずれかに該当することも必要です。
Q 特定親族特別控除は外国人社員にも適用されますか?
A 居住者に該当する外国人社員であれば適用されます。 19歳以上23歳未満の親族で合計所得金額が58万円超123万円以下の場合、最高63万円の控除を受けられます。
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