外国人エンジニアは、家族を海外から帯同することができるので、単身で働くよりも心にゆとりができ、長く日本で働くモチベーションにも繋がっています。しかしながら、就労ビザ(在留資格)は種類により、家族の帯同の可否や範囲が異なっているため、複雑なのが現状です。この記事では、kedomoで紹介実績の多いエンジニアを中心に家族帯同について、丁寧に解説します。
目次
1.外国人エンジニアとは【「技術・人文知識・国際業務」と「高度専門職1号ロ」】
入管法によって、現在29種類の就労ビザ(在留資格)が認められています。その中で、エンジニアが取得することができるのが、「技術・人文知識・国際業務」と「高度専門職1号ロ」の二つになります。
外国人が働けるビザについてはコラム『外国人が日本で働くためのビザ(在留資格)とは』で解説しています。
「技術・人文知識・国際業務」について
在留外国人の約1割を占めるメジャーな在留資格です。それぞれ異なる3つの分野の在留資格が統合されて一つになりました。外国人エンジニアがこの就労ビザを取得するためには、下記の3つの要件を満たすことが必要です。
①理学、工学その他の自然科学の分野に属する技術若しくは知識を要する業務に従事すること
②業務に関連する科目を学び、日本又は外国の大学(短大含む)を卒業しているか、日本の専門学校を卒業すること(10年以上の実務経験で代替化)
③日本人が従事する場合に受ける報酬と同等額以上の報酬を受けること
コラム:『外国人が日本で働くためのビザ「技術・人文知識・国際業務」』も併せてご覧ください。
「高度専門職1号ロ」について
優秀な外国人材を日本へ呼び込むために、2015年に新しく創設された在留資格です。高度専門職1号はイロハの3種類に分かれており、イは研究や教育、ロはエンジニアなど、ハは経営が該当します。従来の在留資格にない様々な優遇措置を認められているのが特徴です。この就労ビザを取得するためには、入管が定めるポイント制において70ポイント以上取得し、かつ年収300万円以上である必要があります。外国人エンジニアとしての業務内容は、「技術・人文知識・国際業務」と変わらないため、70ポイント以上を獲得できるならば「高度専門職1号ロ」の方が良いと言えるでしょう。
ポイント制度については『ポイント評価の仕組みは?(出入国在留管理局)』をご参照ください。
「技術・人文知識・国際業務」と「高度専門職1号ロ」の違い
「高度専門職1号ロ」には国際業務に該当する業務内容は含まれておりません。その他の技術・人文知識については、両者は共通した業務内容です。
しかしながら、先に述べた通り「高度専門職1号ロ」には優遇措置措置が認められており、それが両者の違いとして生じています。具体的には下記の7つの項目です。
1. 複合的な在留活動の許容
2. 在留期間「5年」の付与
3. 在留歴に係る永住許可要件の緩和
4. 配偶者の就労
5. 一定の条件の下での親の帯同
6. 一定の条件の下での家事使用人の帯同
7. 入国・在留手続きの優先処理
2.外国人エンジニアの家族の範囲
外国人エンジニアに帯同できる家族の範囲は、就労ビザ(在留資格)により異なります。
「技術・人文知識・国際業務」の場合
配偶者と子供に限定されます。両親や兄弟は含まれません。子供は嫡出子だけでなく養子も認められており、成年に達していても該当します。
「高度専門職1号ロ」の場合
基本的に配偶者と子供ですが、一定の条件下では親も認められます。その条件とは7歳以下の子供の養育をするか、配偶者か本人が妊娠中でその介助を行う場合です。外国人エンジニアの年収が800万円以上、同居するケースでなければいけません。
3.外国人エンジニアの家族を呼び寄せる手続き
家族を本国に呼び寄せるためには、「家族滞在」の在留資格認定証交付申請を行う必要があります。手続きの内容について、詳しくみていきましょう。
手続き内容
申請人は、配偶者や子供になります。外国人エンジニアの住所を管轄する出入国在留管理局へ、外国人エンジニアが代理で申請を行うことができます。期間は1ヶ月~3ヶ月程度かかり、外国人エンジニアが就労ビザ「高度専門職1号ロ」の場合は優先的に処理されます。費用はかかりません。
在留資格認定証が交付されたら、それを本国に送付し、日本大使館にて査証の申請を行います。
必要書類
必要書類は下記の6つが法務省により挙げられています。
① 在留期間更新許可申請書 1通
法務省HP「在留資格認定証明書交付申請」よりダウンロード可能です。
② 写真(縦4cm×横3cm)1葉
③ 返信用封筒(定形封筒に宛先を明記の上,404円分の切手(簡易書留用)を貼付したもの) 1通
④次のいずれかで,申請人と扶養者との身分関係を証する文書
(1) 戸籍謄本 1通
(2) 婚姻届受理証明書 1通
(3) 結婚証明書(写し) 1通
(4) 出生証明書(写し) 1通
(5) 上記(1)~(4)までに準ずる文書 適宜
⑤扶養者のパスポート及び在留カード(在留カードとみなされる外国人登録証明書)の写し 1通
⑥扶養者の職業及び収入を証する文書
家族滞在というビザの性格上、外国人エンジニア本人の証明書が多く要求されます。会社にとっても、直ぐには作成できない場合もあるので、時間に余裕をもって準備を行いましょう。
審査のポイント
審査のポイントとしては大きく3つ挙げることができます。
〇申請人と扶養者の身分関係
申請人である配偶者(又は子)と、扶養者である外国人エンジニアとの身分関係を公的な書類で証明しなければなりません。外国語で書かれた文書は、日本語の訳文を添えて提出しましょう。
〇現在、扶養者から扶養を受けているか
扶養者から定期的に仕送りなどを受けているか、銀行口座のコピーなどの立証資料を添えておくと確実です。成人に達した子供の場合、扶養する必要がないと判断され、不許可となることもあります。
仕送りに関する詳細は『外国人社員の銀行口座開設と家族への送金方法』をご覧ください。
〇扶養者の扶養能力(年収)
年収基準は具体的な数値があるわけではありませんが、配偶者と一人の子供の場合、年収300万円程度は必要と言われています。もちろん、地域によってはそれより低い年収でも、許可された事例は多くあります。年収基準が心配な場合は、具体的な支出額を算出することで、扶養できる能力があることを示しましょう。
4.外国人エンジニアの家族を呼び寄せた後の注意点
家族を呼び寄せた後に起こりうるケースについて、それぞれ説明します。
配偶者の就労の可否
在留資格「家族滞在」で来日する場合、資格外活動許可を受けることで、週28時間までのアルバイトを行うことができます。フルタイムでの就労はできないので、注意してください。
「高度専門職1号ロ」の配偶者の場合、学歴・実務経験などの要件を満たさずとも、就労ビザ「教育」「技術・人文知識・国際業務」「研究」「興行」に該当する活動を行うことができます。配偶者の在留資格は「家族滞在」ではなく、「特定活動」になります。就労するためには、あらかじめ就職先を決めた上で、入管に申請が必要です。
日本での子供の養育について
外国人エンジニアの子には就学の義務はありませんが、希望する場合には、日本人児童と同様の教育機会が与えられます。住民登録を行う際に役所にて案内がありますが、市町村の教育委員会にて手続きが必要です。入学金、授業料、教科書代が無料ですが、制服や給食代は有料になります。各自治体によって異なりますが、日本語が不自由な児童に対しては、日本語の特別授業があるので安心です。
日本にて子供が生まれた際は、両親が外国人の場合、子供も外国籍を取得します。出生後、14日以内に役所にて出生届、30日以内に出入国在留管理局にて在留資格申請、そして在日大使館でパスポートの申請を行います。在留資格は「家族滞在」です。
永住権取得の要件
配偶者や子供が永住権を取得するための要件は、通常の永住権取得の要件とは異なります。原則として、外国人エンジニアが永住権を取得しているか、一緒に申請する必要がありますが、下記のような要件を満たすことで申請することが可能です。
配偶者の場合(子供の場合は①を除外)
①婚姻後3年以上の経過
②日本における居住歴が1年以上経過していること
③現在所持している在留資格の期間が3年以上あること
「高度専門職1号ロ」の在留資格では最短1年で永住権を取得することができます。
永住権の取得についてはコラム『外国人社員が永住権を取得するには』で詳しく説明しています。
5.エンジニア以外の在留資格(技能実習・特定技能)の家族帯同
技能実習は、その制度趣旨から、残念ながら家族帯同は認められてません。また特定技能1号についても、同様に現状では家族の帯同はできません。しかし、特定技能2号では、配偶者と子供の帯同が認められています。
技能実習、特定技能についての詳細は『製造業で外国人材を雇用できるビザ(在留資格)』をご覧ください。
6.外国人採用はkedomoへ
外国人エンジニアが家族を日本に呼び寄せる方法を解説しました。手続きは基本的に外国人エンジニア本人が準備を行いますが、内容によっては理解が難しいため、企業側のサポートも必要です。
kedomoは、外国人に特化した人材紹介をしており、ご紹介先の企業様がスムーズに外国人の方を受け入れられるよう情報提供に努めています。特定技能「介護」「養殖業」「造船」「製造」「外食」「宿泊」は登録支援機関として人材と企業様のサポートに力を入れております。また、大学で専門知識を身につけ、経験を積んだ『外国人エンジニア』の人材紹介も可能です。外国人採用をご検討の際は、気軽に声をお掛けください。
<参考ページ>
『外国人エンジニア採用』
外国人エンジニアの採用方法、流れ、料金等をわかりやすく解説しています。
『外国人社員が永住権を取得するには』
外国人が在留期間や在留資格の制限なく永住できる権利「永住権」の解説です。
『登録支援機関の業務』
kedomoの支援の特徴、費用、そして基本的な登録支援機関の役割を説明しています。