新しい在留資格である特定技能がスタートし、今後外国人労働者の数はますます増加していくと言われています。その中で問題となっているのが、外国人労働者の失踪トラブルです。
不法残留者数は1993年5月時点の298,646人をピークに減少していましたが、2015年1月時点から増加しており、その中でも技能実習生の不法残留者の増加率が高くなっています。 この記事では、外国人の不法残留の実態と、失踪トラブルの原因、そして失踪の防止策について考えていきます。
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目次
1.外国人の不法残留者数の実態
令和元年7月の法務省の発表によると、外国人の不法残留者は79,013人を記録しました。前回調査時の平成31年1月時点の74,167人と比較すると4,846人と6.5%の増加です。
下記は在留資格別、国籍別の不法残留者のグラフ、そして詳細なデータです。


国別・在留資格別の割合
今回の統計ではじめてベトナムが韓国を抜き去り、不法残留者数でトップに立ちました。これはベトナム人技能実習生の失踪の増加が原因と考えられます。
データを詳しく見ていきましょう。各国により、不法残留者数の内訳が異なっていることがわかります。最も不法残留者数が多くなっているベトナムでは、技能実習生の失踪者が53%を記録しています。一方で2位に位置する韓国では短期滞在の不法残留者がほぼ90%近くを占めました。
全体の割合では、短期滞在での不法残留者が63.2%とトップとなりましたが、これは風営法など在留資格で認められていない仕事に従事するために、短期滞在で入国しオーバーステイの状態になることが原因と考えられます。また4位の留学も本国への仕送りや借金返済のためのアルバイトを優先するあまり、学業の継続が厳しくなることが要因の一つです。
kedomoコラム『外国人が日本で働くためのビザ(在留資格)とは』も併せてご覧ください。
外国人労働者のなかでも、技能実習生に多い失踪
就労を目的とした在留資格では、技能実習が不法残留者数において1位となり、前年からの増加率も15.7%を記録しました。技能実習制度では転職等が認められておらず、受け入れ企業や監理団体により寝食を含めた生活全般のサポートを受けています。現在の境遇から抜け出し、引き続き日本に滞在するためには、失踪という手段を取るしかない現実も、増加の一因となっています。
2.外国人労働者の失踪原因
ここでは外国人労働者の中でも技能実習生に焦点をあてて、失踪トラブルの原因を探ります。大きく分けて就労環境と金銭面の2つの理由で失踪するケースが多いようです。それぞれみていきましょう。
原因1)就労環境
かつてニュースにおいて話題となった会社側が技能実習生のパスポート等を取り上げ、逃げ出すことを防止するようなケースは、昨今の規制強化で禁止されたため減少しました。しかし、長時間労働の強制や安全基準を満たしていない会社は一定数存在しています。
厚生労働省により発表された資料によると、監督指導を行った技能実習実施者のうち、労働基準関係法令違反が認められたのは70.4%にのぼりました。下記は違反事業者数の推移と、違反事項の内訳です。


厚労省:『外国人技能実習生の実習実施者に対する平成30年の監督指導』
労働時間に関する違反事項が23.3%と最も多く、その次に使用する機械に対して講ずべき措置などの安全基準の違反が22.8%、そして割増賃金の支払いが14.8%という結果になりました。労働時間については、36協定※の締結・届出がないまま違法な時間外・休日労働を行わせていたケースが多いようです。
※36協定…『時間外労働の上限規制わかりやすい解説(厚労省)』
原因2)金銭面
技能実習制度は出稼ぎ労働ではなく、あくまで人材育成を通じた国際協力を目的としているため、給与が低く抑えられる傾向があります。しかし技能実習生にとって来日する目的は稼ぐことであり、天引き後の給与の低さに不満を覚えることも多いようです。またSNSの発達により、東京などの都市部の時給の高さを知ることができるようになり、賃金アップを求めて失踪するケースもあります。
(技能実習制度においては会社側の金銭的な負担が大きく、経営上の観点から採算をとるためには低く抑えざるを得ない点もあり、これは技能実習制度の構造上の問題とも言えます)
技能実習生から労働基準監督機関に対して、労働基準関係法令違反の是正を求めてなされた申告103件のうち、賃金・割増賃金の不払いに関するものが96件と最も多くなっています。(申告事項が2つ以上ある場合は、各々に計上しているので、各申告事項の件数の合計と申告件数とは一致しない)

厚労省:『外国人技能実習生の実習実施者に対する平成30年の監督指導』
3.防止するために
外国人の「技能実習の適正な実施及び技能実習の保護に関する法律(技能実習法)」が2017年に施行され、外国人技能実習機構の創設や、監理団体の許可制、人権違反事項に対する禁止事項、罰則の規定など、技能実習生の保護に向けての政府の動きは加速しています。
外国人労働者の失踪を防止するために、①優良な監理団体の選定、②就労環境の適正化、③ヒューマニスティック(人道的)な対応の3つを心掛けるようにしましょう。
①優良な監理団体の選定
技能実習生の受入れでは、監理団体の定期的な監査を受けます。就労条件や労働環境など、細かくチェックし、助言・サポートを適切に行う監理団体を選ぶようにしてください。
2国間の取り決めにより、悪質なブローカーを経由した技能実習生の募集も減少しましたが0ではありません。優良な監理団体を通じて受入れを行うことで、こうしたリスクをなくすことができます。
②就労環境の適正化
技能実習生の失踪の原因でも言及しましたが、長時間労働の抑制や安全基準の遵守に努めるようにしましょう。
③ヒューマニスティック(人道的)な対応
技能実習生との挨拶や会話において、感謝の言葉や気遣いの気持ちを忘れないようにしてください。言葉や習慣が異なる国の中で技能実習生は想像以上のストレスにさらされています。人として尊重してくれているという態度は、言葉がよく分からなくても敏感にくみ取れるものです。良好な人間関係は、失踪トラブルを抑止するのに役立つでしょう。
4.まとめ(外国人採用はkedomoへ)
外国人労働者の失踪トラブルについての実態、原因、防止策を説明しました。
「失踪のニュースを見て外国人採用に踏み出すのが不安」という声も聞きますが、受入れ企業と人材が正しい知識を持つことで、防げることが多くあります。
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<参考ページ>
『技能実習:受入れ成功のポイント』
『外国人採用の注意点【外国人活用の課題と改善案】』
<参考文献>
『技能実習制度の運用に関するプロジェクトチームの調査・検討結果概要』