海外から直接来日した外国人社員を迎え入れる際、よく企業担当者から相談を受けるのが「銀行口座の開設」です。kedomoが特定技能の支援で同行するときも、在留カードを手に入れた本人と一緒に窓口へ足を運びます。給与の振込、家賃や携帯電話の引落し、母国の家族への海外送金まで、生活の基盤となる手続きです。
このコラムでは、外国人社員が日本で銀行口座を開設するための条件と必要書類、母国の家族へ海外送金する方法、年末調整で扶養控除を受けるために必要な書類を、企業の人事・採用担当者の視点で説明します。
この記事でわかること
- 外国人社員が銀行口座を開設するための条件と必要書類
- 母国の家族へ海外送金する2つの方法と、それぞれの手数料の目安
- 年末調整で国外に住む家族を扶養控除に入れるための要件と書類
- 外国人社員を金融犯罪から守るために伝えておくべきこと
執筆:株式会社kedomo(登録支援機関・外国人材紹介)
目次
1.外国人社員が銀行口座を開設する条件と必要書類
「6か月ルール」は就労中の外国人社員には当てはまらない
外国人社員の銀行口座開設について、ネット上では「日本に入国してから6か月以上経過していないと開設できない」という説明をよく目にします。これは正確ではありません。
外国為替及び外国貿易法(外為法)上の「居住者・非居住者」の判定基準を定めた財務省通達では、外国人は原則として非居住者として扱われますが、次のいずれかに該当する人は「居住者」として取り扱うと定められています。参考:「外国為替法令の解釈及び運用について」(財務省通達 昭和55年蔵国第4672号)
- 本邦内にある事務所に勤務する者
- 本邦に入国後6か月以上経過するに至った者
つまり、日本国内の企業に就職して勤務している外国人社員は、入社時点から外為法上の「居住者」として扱われます。三菱UFJ銀行のホームページにも「日本国籍をお持ちでないお客さまは、法令により、日本国内に勤務(アルバイト・パートを除く)もしくは入国後6か月以上経過の場合を除き、非居住者となります」と明記されています。参考:「口座開設時の本人確認書類」(三菱UFJ銀行)
法律上は、来日して入社したその日から普通預金口座を開設できる立場にあるということです。
銀行ごとに独自審査があり、メガバンクと地方銀行で対応が分かれる
ただし、銀行はマネーロンダリング対策(犯罪収益移転防止法)などの観点から、外為法の居住者・非居住者の区分に加えて独自の審査基準を設けています。この独自審査の厳しさが銀行ごとに大きく異なるため、「入社直後でも開設できるかどうか」は銀行選びでほぼ決まるのが実態です。
メガバンク(三菱UFJ銀行・三井住友銀行・みずほ銀行)は、来日後6か月以上の経過を実質的な目安として運用しているケースが多く、来日直後の外国人社員には窓口で慎重な対応がとられがちです。
一方、地方銀行や信用金庫は、特に企業の給与振込指定口座として法人担当者経由で紹介された場合、入社直後の外国人社員でも比較的スムーズに開設に応じてくれるケースが多いです。kedomoが支援している企業でも、地元の地方銀行が入社初日から普通預金口座を開設してくれた事例があります。
ゆうちょ銀行は、在留期間が3か月を超えていれば普通口座の開設に対応しており、来日直後でも申し込みやすい金融機関です。ただし在留期間満了日が口座開設申込日から3か月以内に到来する場合は、在留期間の更新手続きを終えてから申し込む必要があります。参考:「口座を開設される外国人のお客さまへ」(ゆうちょ銀行)
外国人社員の口座開設先を選ぶときは、企業のメインバンク(地方銀行・信用金庫)に法人担当者経由で相談するのが第一候補で、そこで難しければゆうちょ銀行を検討する流れが現実的です。
銀行口座開設に必要な書類
口座開設にあたって用意するのは次の書類です。
- 在留カード(有効期限内のもの。在留期間満了日まで余裕があること)
- パスポート
- 住民票(市区町村役場で住民登録を済ませた後に取得)
- 印鑑(一部の銀行はサインで代替可)
- 在籍を確認できる書類(社員証、勤務先発行の在籍証明書など)
ゆうちょ銀行では、在留資格が「留学」「技能実習」の場合、学生証や社員証などの在籍確認書類の提示を求められます。銀行から勤務先へ在籍確認の連絡が入ることもあるため、企業の人事・経理担当者は事前に情報共有しておくとスムーズです。印鑑文化のない国から来日した社員の場合、銀行印を作る習慣自体がないため、来日前または入社時に銀行印の作成を案内しておくとよいです。
銀行口座開設の流れ
- 必要書類をそろえる
- 来店予約の要否を銀行のホームページで確認する
- 最寄りの銀行・信用金庫・ゆうちょ銀行などの窓口に行く
- 銀行所定の口座開設申込書に記入する
- 通帳を受け取る(キャッシュカードは後日郵送)
外国人の口座開設には本人確認に時間がかかるため、事前の来店予約を必須としている銀行が増えています。予約なしで来店すると当日対応してもらえないケースもあるため、必ず事前に銀行のホームページで確認するか、電話で予約を取ってから訪問してください。
通帳は当日窓口で受け取れることが多い一方、キャッシュカードは本人限定郵便で1〜2週間後に届くのが一般的です。給与振込口座の指定にはキャッシュカードの到着を待つ必要があるため、来日後はできるだけ早く窓口へ行くのが望ましいです。日本語が不安な場合は、企業の担当者または登録支援機関のスタッフが同行するとトラブルが避けられます。kedomoでも、特定技能外国人の銀行口座開設に同行することはよくあります。
口座開設後にやっておくこと
- 給与振込口座として人事・経理に届け出る
- 家賃・電気・ガス・水道・携帯電話の引落し口座を設定する
- 在留カードを更新したら、銀行にも在留期間の更新情報を届け出る
在留期間や住所の更新を銀行に届け出ないと、一時的に取引を制限される場合があります。ゆうちょ銀行はゆうちょ手続きアプリでの情報更新にも対応しており、外国人社員にも案内しやすい仕組みです。
帰国時は必ず口座を解約する
外国人社員が母国に帰国する際は、必ず銀行口座を解約するよう伝えてください。残高は1円単位で全額引き出せます。解約せずに残った口座は、後述する口座売買などの犯罪に悪用されるリスクがあります。解約時には、口座を開設した金融機関(同じ銀行であれば他支店でも可)に、通帳・キャッシュカード・印鑑(開設時に使用した場合)・在留カードを持参します。
2.外国人社員が母国の家族に海外送金する方法
外国人社員が母国の家族に海外送金する方法は、大きく分けて2つあります。
①銀行からの海外送金
口座のある銀行の窓口またはネットバンキングから送金する方法です。本人確認書類・通帳・印鑑、送金先の口座情報、送金理由を準備して手続きします。送金手数料は1回あたり3,000〜7,500円程度が一般的で、加えて為替レートに上乗せされる為替手数料や中継銀行手数料がかかることが多いです(2026年4月時点)。コストは高めですが、銀行で完結する安心感があります。
②資金移動業者(送金サービス)からの海外送金
Wise、SBIレミット、Western Unionなど、金融庁に登録された資金移動業者を通じて送金する方法です。アプリやコンビニから送金でき、手数料が銀行より安いのが特徴です。少額〜中額の送金では、銀行の数分の一のコストで済むケースもあります。1回あたりの送金上限額(Wiseの場合は日本から100万円/回)が設定されているため、まとまった金額を送る場合は注意が必要です。
外国人社員にどの送金手段を使うかを案内する際は、必ず「金融庁に登録された資金移動業者か」を確認してください。未登録の業者を使うと、いわゆる「地下銀行」に該当し、外国人社員本人が違法行為に加担することになります。金融庁は資金移動業者登録一覧をPDFで公開しています。
3.年末調整で家族を扶養控除に入れるための条件と書類
外国人社員が母国に住む家族へ送金している場合、一定の要件を満たせば年末調整で扶養控除を受けられます。ただし2023年(令和5年)1月から国外居住親族の扶養控除の要件が厳しくなっており、企業の人事・経理担当者はこの点を必ず押さえておく必要があります。
扶養控除の対象となる国外居住親族の範囲
国外に住む親族のうち、扶養控除の対象になるのは次のいずれかに該当する人です。
- 16歳以上30歳未満の人
- 70歳以上の人
- 30歳以上70歳未満で、次の①〜③のいずれかに該当する人
- ①留学により国内に住所及び居所を有しなくなった人
- ②障害者
- ③その年に生活費・教育費として38万円以上の送金を受けている人
つまり30〜69歳の家族(多くは外国人社員の親世代)を扶養控除に入れる場合、年間38万円以上の送金実績が必須です。これは2020年度の税制改正で導入され、2023年1月から適用されている要件です。参考:「国外居住親族に係る扶養控除等の適用について」(国税庁)
なお、扶養親族として認められる範囲は「6親等以内の血族」「配偶者」「3親等以内の姻族」で、これは日本人の扶養控除と同じです。
必要な書類
年末調整で国外居住親族を扶養控除に入れる際、次の書類を会社に提出してもらう必要があります(外国語の場合は日本語訳を添付)。
①親族関係書類
外国人社員と国外の家族との親族関係を証明する書類で、次のいずれかです。
- 外国政府または地方公共団体が発行した、家族の氏名・生年月日・住所が記載された書類
- 戸籍の附票の写しなどの公的書類および家族のパスポートの写し
②送金関係書類
外国人社員が家族の生活費・教育費に充てるために送金したことを証明する書類です。
- 銀行や資金移動業者が発行した送金記録(為替取引の控え)
- クレジットカード会社の利用明細(家族カードで家族が使用した分を本人が支払った記録)
③留学ビザ等書類(30歳以上70歳未満で「留学」に該当する場合のみ)
外国の大学等に留学していることを証明するビザの写しなど。
④38万円送金書類(30歳以上70歳未満で「38万円以上送金」に該当する場合)
その年の送金合計額が38万円以上であることがわかる送金関係書類です。
仮想通貨での送金や金融庁未登録の業者を介した送金は、扶養控除の証明書類として使えません。kedomoが支援する企業でも、外国人社員が「友人経由で送金していた」というケースを年末調整時に発見し、控除が受けられなかった例があります。送金開始時点から正規の手段を使うよう案内しておくのが安全です。
外国人社員の所得税や年末調整の全体像については、外国人社員の所得税と年末調整も参考にしてください。
4.外国人社員を金融犯罪から守るために
来日したばかりの外国人社員は日本の法律に不慣れで、知らないうちに犯罪に巻き込まれることがあります。特に以下は、入社時のオリエンテーションで必ず伝えてほしい内容です。
- 地下銀行・闇金:金融庁に登録されていない業者を介した送金や貸付は違法です。「手数料が安い」と紹介されても利用しないよう伝えてください。
- マネーロンダリング:他人からお金を預かって自分の口座に振り込ませ、別の口座に移す行為は犯罪です。「報酬を渡すから手伝ってほしい」と頼まれても断るよう徹底します。
- 銀行口座の売買:通帳・キャッシュカードを売却することは犯罪収益移転防止法に違反します。帰国時は必ず口座を解約してから出国するよう繰り返し伝えてください。
- クレジットカード詐欺:偽造カードでの買い物や、他人のカードでの代理購入を頼まれるケースがあります。逮捕されれば在留資格にも影響するため、絶対に応じないよう周知が必要です。
オンラインカジノは日本では違法
最近kedomoが技能実習生の監理団体から耳にしたのが、オンラインカジノに関するトラブルです。「海外のサイトだから日本では合法」と誤解した実習生が、SNSの広告から登録して多額の損失を出し、借金問題に発展してしまったケースがあったとのことです。
日本国内からオンラインカジノにアクセスして賭博を行う行為は、運営者が海外にいても賭博罪(刑法185条・186条)に該当し違法です。警察庁も繰り返し注意喚起をしています。スマートフォンで母国語の広告が流れてくることも多いため、日本人以上に注意が必要です。「日本ではオンラインカジノは違法で、利用すると逮捕される可能性がある」という事実を、入社時のオリエンテーションで必ず母国語を交えて伝えてください。
金融庁も「外国人の方の預貯金口座・送金利用について」というパンフレットを15言語で公開しており、外国人社員へのオリエンテーション資料として活用できます。kedomoでは特定技能の登録支援機関として、入社前後の生活オリエンテーションで母国語を交えてこれらの注意点を説明しています。文章だけでは伝わりにくいニュアンスも、母語での説明なら定着しやすいです。
まとめ
- 日本国内の事務所に勤務する外国人社員は、外為法上は入社時点から「居住者」として扱われ、法律上は来日直後でも普通預金口座を開設できます。
- 実務上はメガバンクで来日後6か月の経過を求められることが多い一方、地方銀行・信用金庫は企業の法人担当者経由で入社直後の開設に応じてくれるケースが多く、ゆうちょ銀行は3か月超で対応しています。
- 母国への海外送金は、銀行と金融庁登録の資金移動業者の2つが選択肢です。資金移動業者のほうが手数料は安いケースが多いですが、必ず登録業者を使うよう案内してください。
- 国外居住親族の扶養控除は2023年から要件が厳しくなり、30〜69歳の家族を対象にする場合は年間38万円以上の送金実績が必要です。
- 地下銀行・口座売買・オンラインカジノなど、外国人社員が巻き込まれやすい金融犯罪・賭博については、入社時のオリエンテーションで母国語を交えて伝えるのが効果的です。
よくある質問(Q&A)
Q.外国人社員はいつから日本の銀行口座を開設できますか?
A.法律上は入社時点から開設できます。 ただしメガバンクは6か月の経過を求める傾向があり、地方銀行・信用金庫やゆうちょ銀行のほうが入社直後でも開設しやすいです。
Q.銀行口座開設に必要な書類は何ですか?
A.在留カード、パスポート、住民票、印鑑、在籍確認書類(社員証など)が基本です。
Q.銀行に行く前に予約は必要ですか?
A.来店予約を必須とする銀行が増えています。 事前に銀行のホームページか電話で確認してください。
Q.海外送金の手数料はいくらですか?
A.銀行は1回3,000〜7,500円程度、Wiseなどの資金移動業者は数百〜千円程度が目安です(2026年4月時点)。
Q.親(55歳)を扶養控除に入れられますか?
A.30〜69歳の家族を扶養控除に入れるには、その年に38万円以上の送金実績が必要です(留学・障害者を除く)。





