現行の技能実習制度は「転職不可」「低賃金」で外国人材にとって不利な面があり、本来の趣旨である人材育成ではなく人手確保手段となっていることから、制度改正や廃止の声がありました。
そして、2023年4月、今後の技能実習について方向性を検討していた有識者会議より中間報告がありました。(参考:「技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(第6回)」)
今回はこの報告から、技能実習に代わる検討中の新制度の特徴を紹介します。
目次
1.転職(原則不可から制限付きで可能に)
技能実習の大きなメリットの一つが、転職がないため3~5年間程度、人手を確保できることでした。新制度ではこれが変更される可能性が高く、人材育成や雇用者の採用費用負担の観点から一定期間は一つの職場で働き、その後は転職ができるような仕組みが検討されています。なお、『中間報告書案(概要)』では転職ではなく転籍と表記されているので、おそらく同じ職種でないと会社が変われないということになりそうです。
なお、もし転職できるまでの期間が1年未満であった場合、特定技能制度であっても海外から初来日する外国人の方が1年以内に転職するケースはそれほど多くないので、特定技能と比較して雇用側が新制度を選ぶ大きなメリットとはならないと感じます。
2.職種(特定技能の職種と新制度を一致させる)
現在も技能実習生が特定技能へ移行すると、同じ職場で+5年働けますが、それは技能実習と同じ業種が特定技能でもある場合に限ります。
新制度と特定技能の業種が一致すれば、技術的に習熟した実習生が引き続き働けるため、雇用側にとっても大きなメリットです。特定技能にあり、技能実習にはない職種としては、外食業、養殖業(現在も一部の作業は可)、宿泊などです。また、縫製は技能実習にありますが、特定技能にはありません。
3.支援体制(支援組織厳格化)
これまでの技能実習制度では、支援組織の管理が不十分で、実習生の失踪や実習計画とは関係ない仕事をさせていたなどの問題が度々起こっていました。そのため、支援組織の管理能力向上は不可欠です。なお、技能実習は監理団体が、特定技能は登録支援機関が外国人支援をしていますが、新制度ではどのような組織が支援を担うことになるのか注目されます。
4.日本語力(就労前後の教育の仕組み)
技能実習を終えた外国人の方々と話すと、同じ年数日本で生活していても日本語力に大きな差があることを実感します。日本語力が高い実習生が在籍していた企業では、定期的に会社負担で日本語教室を開いたり、日本語能力試験N2に合格した人材には手当などのインセンティブを与えたりと、組織的に外国人の日本語レベル向上に取り組まれていることが多いと感じます。
外国人側も、社内に通訳や日本語が上手な友達がいると、「自分が仕事で使う日本語さえ覚えればOK」と考え、それ以上勉強しないことがあるので、キャリアアップや地域交流の面で所属先に依らない日本語教育の仕組みを考えるのは良いことだと思います。
参考:『出身国(母語)で異なる日本語習得スピードと採用時の日本語能力』kedomoブログ
5.まとめ
4つピックアップしましたが、やはり一番気になるのは転職制限の緩和です。約3~5年間、必ず自社で働いてもらえたのが、転職ができるようになると、人気の地域や賃金比較によって特定の企業に人が集まる可能性があります。そのため、技能実習制度を利用している企業は、新制度の動向を見ながら人手確保を考える必要がありそうです。
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