在留資格「特定活動」は、他の在留資格とは異なり、カバーする活動内容がとても広いため、実態が掴みづらく、わかりにくいものとなっています。
この記事では、外国人の採用を検討されている企業様向けに、在留資格「特定活動」の概要を説明するとともに、2019年より新設された特定活動(本邦大学卒業者)について解説します。
目次
1.在留資格における「特定活動」の位置づけ
在留資格とは、日本における外国人が行う活動の根拠となる資格です。外国人が日本に滞在する際には、一人につき一つ在留資格を保有することになります。
2020年7月現在、在留資格は全部で29種類存在しています。
外交、公用、教授、宗教、報道、高度専門職、経営・管理、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、興行、技能、技能実習、特定技能、文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者、特定活動 |
しかし、この在留資格に当てはまらない活動内容も数多くあります。例えば、アマチュアスポーツ選手が日本で試合を行う際には、プロ選手ではないため在留資格「興行」は適用外となったり、治療のために日本の医療機関に長期滞在する際の在留資格は存在しませんでした。来日する外国人の目的や活動内容は多様化しており、その一つ一つを規定することは難しいため、特定活動が受け皿のような役割を果たしているのです。
入管法において特定活動は「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」と規定されています。他の在留資格は法律で定められているのに対して、特定活動は法務大臣の権限で新設することができるため、柔軟な運用が可能です。先程の日本の医療機関における長期滞在も、国が推進する医療ツーリズム・医療インバウンドの拡大を受け、特定活動(告示第25号)(通称「医療滞在ビザ」)として平成23年に新設されました。
2.現在認められている特定活動一覧
様々な活動の受け皿となっている特定活動ですが、その中でも「告示特定活動」と「告示外特定活動」の2つに分類することができます。
告示特定活動
法務大臣が告示により、あらかじめ公表している活動内容を指します。この活動内容は現在46種類認められており、詳しくは『出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件』に規定されています。令和元年6月17日が最新改正版です。(2020年7月現在)
具体的にどのような活動が認められているか、条文の順番に見ていきましょう。
1号 外交官や領事館の家事使用人 |
告示外特定活動
上記の告示に含まれていない活動内容について、法務大臣が個別に審査をした上で認めるものが告示外特定活動です。代表的な活動内容として下記の3つが知られています。
在留資格の変更や更新が不許可となった際の出国準備活動
日本から母国に帰国するための準備を行う活動です。通常30日か31日の在留期間が付与されます。31日の場合は、再び在留資格変更許可申請もしくは在留期間更新許可申請を行うことができますが、30日の場合は余程の事情がない限り、こうした申請を行っても不受理となります。
留学生が卒業後も引き続き行う就職活動
日本の大学、あるいは専門学校を卒業した留学生が就職活動を行うことを目的としています。通常6ヶ月が付与され、さらに6ヶ月の更新が1度だけ認められています。
難民認定申請中の外国人の日常生活や就労活動
人道上の配慮から難民認定申請中の外国人は日本に滞在することが認められています。就労活動が認められるかは審査によりますが、近年、この制度を悪用する外国人が増加したため、運用が厳格化されています。
3.新設された「特定活動(本邦大学卒業者)」
先程の告示特定活動に、2019年から新たに46号として追加されたのが本邦大学卒業者です。これまで日本人と比較して際立って低い水準となっていた、外国人留学生の就職率の向上を意図しています。外国人留学生の多くは、就職後、在留資格「技術・人文知識・国際業務」を取得して就労します。しかし雇用する企業側にとって、「技術・人文知識・国際業務」は、従事できる業務内容が制限されてるため、日本人労働者と異なる扱いをしなければならず、使いづらいといった問題がありました。
従事できる業務範囲が在留資格「技術・人文知識・国際業務」より広い
特定活動(本邦大学卒業者)では、従事できる業務範囲が狭く限定されておらず、一般企業の就労実態に即した使いやすいものとなっています。特定活動(本邦大学卒業者)として認められるためには、①日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務であり、②日本の大学又は大学院において修得した広い知識及び応用的能力等を活用するものと認められる必要があります。
①日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務
上司からの作業指示を日本語で理解するだけではなく、双方向の日本語を用いたコミュニケーションを要する業務を指します。
②日本の大学又は大学院において修得した広い知識及び応用的能力等を活用するものと認められる
自然科学・人文科学の技術・知識を活用する業務が含まれている、若しくは将来的に従事することが予定されていれば容認されます。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」では、自然科学・人文科学の技術・知識を必要とする業務に従事する活動であると定められています。特定活動(本邦大学卒業者)では将来的にそのような業務に従事すれば良いとされているため、「入社後1年間は現場の仕事を日本人社員と同様に覚えてほしい」といった企業側のニーズを満たすことも可能です。
在留資格「技術・人文知識・国際業務」について詳しく知りたい方は、『就労ビザ「技術・人文知識・国際業務」の審査ポイントと必要書類』をご参照ください。
特定活動(本邦大学卒業者)の具体的な就労例
具体的な就労例として法務省より示されているのは、下記の7パターンです。(留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学卒業者)についてのガイドラインより)いずれも、これまで正社員としての就労が難しかった分野で、就労が可能となっています。
① 飲食店での、店舗管理業務や通訳を兼ねた接客業務(日本人に対しても可能)
※ 厨房での皿洗いや清掃にのみ従事するのは不可
②工場において、日本人従業員から受けた作業指示を技能実習生や他の外国人従業員に対し外国語で伝達・指導しつつ、自らもラインに入って業務を行うもの
※ ラインで指示された作業にのみ従事することは不可
③小売店において、仕入れや商品企画、通訳を兼ねた接客販売業務(日本人に対しても接客可能)
※ 商品の陳列や店舗の清掃にのみ従事することは不可
④ホテルや旅館での、翻訳業務を兼ねた外国語によるホームページの開設、更新作業等の広報業務を行うものや、外国人客への通訳(案内)を兼ねたベルスタッフやドアマンとして接客を行うもの(日本人に対しても接客可能)
※ 客室の清掃にのみ従事することは不可
⑤タクシー会社において、観光客のための企画・立案や自ら通訳を兼ねた観光案内を行うタクシードライバーとして活動するもの(通常のタクシードライバー業務も可能)
※ 車両の整備や清掃のみに従事することは不可
⑥介護施設で外国人従業員や技能実習生への指導を行いながら、日本語を用いての介護業務
※ 施設内の清掃や衣服の洗濯のみに従事することは不可
⑦食品製造会社において、他の従業員との間で日本語を用いたコミュニケーションを取りながら商品の企画・開発を行いつつ、商品製造ラインに入って作業を行うもの
※ 単に商品製造ラインに入り、指示された作業にのみ従事することは不可
取得するための要件
この在留資格を取得するためには、名称の通り、①日本の大学もしくは大学院を修了している他に、もう一つ要件が存在します。
それは、②日本語能力試験N1又はBJTビジネス日本語能力テストで480点以上を有することです。大学又は大学院において「日本語」を専攻して卒業した方も、②を満たすものとして取り扱われます。しかもこの「日本語」を専攻した大学は、海外でも良いため、母国で「日本語」を専攻し大学を卒業後、留学生として日本の大学を卒業すれば、要件を2つとも満たしたことになります。
特定活動(本邦大学卒業者)は最初は1年の在留期間が付与されますが、その後は5年、3年、1年の在留期間で更新ができ、永住ビザも将来的には取得可能です。もちろん配偶者や子供も呼ぶことができるため、要件さえ満たせば、外国人にとってもメリットの大きい就労ビザと言えます。
4.まとめ(外国人採用はkedomoへ)
在留資格「特定活動」の概要や、新設された特定活動(本邦大学卒業者)について、わかりやすく解説しました。特定活動(本邦大学卒業者)は、これまで就労ビザの都合上、外国人の正社員採用が難しかった小売業や製造業などでも、外国人の雇用を可能とする画期的な制度です。
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<参考資料>
『出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の五の表の下欄に掲げる活動を定める件』
『留学生の就職支援に係る「特定活動」(本邦大学卒業者)についてのガイドライン』
いずれも法務省ホームページ
<参考ページ>
『初めての外国人採用』
採用の流れ、スケジュール、日本語力など初めの一歩を説明しています。
『外国人が日本で働くためのビザ(在留資格)とは』
29種類の資格、取得手続きなどを説明しています。