外国人に通じやすい日本語の話し方とは、「です・ます」調で短く区切り、やさしい言葉を選んで伝える話し方です。出入国在留管理庁と文化庁が公表した「やさしい日本語ガイドライン」でも、こうした工夫が推奨されています。
この記事では、外国人社員と日本語でスムーズにコミュニケーションを取るための具体的なポイントを、日本語教師へのヒアリングやkedomoの支援現場の経験を交えて解説します。
この記事でわかること
- 外国人に伝わりやすい日本語の5つのポイント
- 職場でやってしまいがちなNGコミュニケーション例
- 「やさしい日本語」の公的ガイドラインの活用法
- 外国人社員の日本語上達を促す職場の関わり方
執筆:株式会社kedomo(登録支援機関・外国人材紹介)
目次
1.外国人の日本語学習の進め方
外国人に伝わりやすい話し方を身につけるには、相手がどのように日本語を学んでいるかを知ることが役立ちます。
日本語学校では、まず五十音とひらがなの読み書きからスタートし、あいさつやよく使う言葉を覚えていきます。その後、ひらがな→カタカナ→漢字の順に文字を学びながら、会話に必要な「文型」を1時間の授業で2つ程度のペースで習得します。1つの文型は「説明→発話練習→文の作成→ペアでの会話練習」という流れで進みます。
このようにテキストで学んだ文型は「文を作る力」にはつながりますが、実際の場面で「いつ・どこで使うか」が分かりにくく、結果として職場で使えないという学習者が少なくありません。kedomoが支援する企業でも、「試験ではN3を持っているのに、現場の指示が伝わらない」という相談をよく受けます。この背景には、テキスト学習と実際の職場のことばにギャップがあることが関係しています。
こうしたギャップを埋めるために、受け入れ側の日本人が話し方を少し工夫するだけで、コミュニケーションは大きく改善します。
2.外国人に伝わりやすい日本語とは
日本語教師へのヒアリングと、出入国在留管理庁・文化庁が策定した「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」(出入国在留管理庁)を踏まえ、職場で実践できる5つのポイントを紹介します。
①ゆっくり話す
ゆっくり話すことは基本ですが、ただスピードを落とすだけでは不十分です。言葉の区切りで間を持たせることがより効果的です。
例えば、「明日、仕事へ、行きます」のように、ひとつの意味のまとまりごとに区切り、相手が理解しているか表情を見ながら進めます。kedomoの支援先でも、作業指示を区切りながら出すようにしたところ、聞き返しの回数が明らかに減ったという声があります。
②「です」「ます」調で話す
日本語を学び始めた外国人は「食べます」「飲みます」のように「~です」「~ます」の形で動詞を覚えます。
親しみを込めて「これ、食べる?」と辞書形で話しかけると、かえって伝わらなくなります。外国人に話すときは「これを食べますか?」と「です・ます」調を使ってください。
一方で、過度な敬語も注意が必要です。「お名前をお書きいただけませんか」のような表現は日本語学習者にはかなり難しく、「名前を書いてください」のほうが伝わります。「食べる→召し上がる」「来る→いらっしゃる」のように動詞の形が完全に変わる尊敬語も避けたほうがよいでしょう。
③短く、単純に話す
1つの文には主語と述語を1つずつ。これを意識するだけで伝わりやすさが変わります。
NG例:「さっき小林さんが言ってたけど、来週、健康診断があるから、この紙に名前とか書いておいて」
OK例:「来週、健康診断があります」「この紙に名前と誕生日を書いてください」
日本人同士の会話では省略や接続が多くなりがちですが、外国人に伝えるときは1文を短く区切ることが大切です。
④やさしい言葉に言い換える
難しい漢字の熟語は、意味を推測しにくいため伝わりにくい傾向があります。ふだん使うやさしい言葉に言い換えると理解されやすくなります。
- 「朝食」→「朝ごはん」
- 「頭痛」→「頭が痛い」
- 「出勤」→「会社に来る」
- 「欠勤」→「会社を休む」
kedomoの支援先の工場では、作業手順書の難しい言葉をやさしく書き換えたところ、外国人社員からの質問が減り、作業ミスも少なくなったという事例があります。外国人の採用に使える日本語力の測り方も参考にしてください。
⑤文字通りに発音する
日本語の促音(小さい「っ」)、長音(伸ばす音「ー」)、撥音(「ん」)は、多くの外国人にとって聞き分けが難しい音です。日本人にとって「来て」「切手」「聞いて」は全く違う単語ですが、外国人にとってこの3つの区別は容易ではありません。
また、日本人は会話の中で言葉を省略したり、くだけた発音をしたりすることがあります。例えば「〜ている」を「〜てる」と言ったり、「〜ではない」を「〜じゃない」と言ったりすることは日常的ですが、教科書で学んだ形と異なるため外国人には分かりにくくなります。文字どおりにはっきり発音することを心がけてください。
出身国(母語)で異なる日本語習得スピードと採用時の日本語能力では、国ごとに聞き取りやすい・にくい音の傾向を説明しています。
3.外国人に通じない日本人のカタカナ語
カタカナ語を使えば英語話者に伝わると考えてしまう日本人は少なくありませんが、実際にはむしろ伝わらなくなることが多いです。
ある企業で、英語が話せるベトナム人スタッフに対し、日本人社員が「アップル」「テーブル」などカタカナ語で話しかけたところ、通じませんでした。カタカナ語と英語では発音が大きく異なるうえ、「アルバイト」「アンケート」のような和製英語は英語圏の人にも全く伝わりません。
kedomoでは外国人社員の受入れ時に「カタカナ語は日本語の一部であり、英語とは別の言葉」と説明することをおすすめしています。カタカナ語を使う代わりに、やさしい日本語で伝えるほうが確実です。
職場で外国人社員とのコミュニケーション全般を改善したい場合は、日本語を学ぶ外国人社員をサポートする方法もご覧ください。
4.まとめ
- 「です・ます」調で、1文を短く区切って話す
- 難しい漢字の熟語はやさしい言葉に言い換える(「朝食」→「朝ごはん」など)
- カタカナ語は英語とは別の言葉。やさしい日本語で伝える
- 日常的に話しかけることで信頼関係が生まれ、日本語の上達が早くなる
普段のあいさつで「おはようございます」だけで終わらず、「天気がいいですね」「昨日の夕ごはんは何を食べましたか」など簡単な質問を投げかけてみてください。その場でうまく答えられなくても、「日本語で話したい」という気持ちにつながります。話しかけることでスタッフ同士の信頼関係ができ、外国人は日本語の上達が早くなります。
外国人社員を初めて受け入れる場合は、日本人スタッフ向けに「外国人とのコミュニケーション方法」をテーマにした研修の実施も有効です。出入国在留管理庁の「在留支援のためのやさしい日本語ガイドライン」(出入国在留管理庁)には、書き言葉と話し言葉の両方のポイントがまとめられており、研修資料としても活用できます。
kedomoでは外国人エンジニアの人材紹介のほか、介護、製造業、外食などの特定技能採用を登録支援機関として支援しています。外国人採用をご検討の際は気軽にご相談ください。
Q&A
Q 「やさしい日本語」とは何ですか?
外国人にも伝わるように、語彙や文法をやさしくした日本語のことです。
Q 外国人に話すとき、最も意識すべきことは何ですか?
「です・ます」調で、1文を短く区切って話すことです。
Q カタカナ語は英語が話せる外国人に通じますか?
通じないことが多いです。日本語式の発音に変わっているうえ、和製英語はさらに伝わりません。
Q 敬語を使うと外国人に伝わりにくいですか?
「です・ます」レベルなら問題ありませんが、「召し上がる」のように形が変わる尊敬語は避けたほうがよいです。
Q 「やさしい日本語ガイドライン」はどこで入手できますか?
出入国在留管理庁のウェブサイトから無料でダウンロードできます。



